吹き抜けの家は開放感があり採光性に優れるため、一般住宅でも人気のある設計です。しかし、吹き抜けは構造上冷暖房が効きにくく、生活音が響きやすいなどのデメリットもあります。マイホームの購入やリフォームを考えている人の中には、吹き抜けの家にして後悔しないか不安に思う人もいるのではないでしょうか。
当記事では、吹き抜けの家にして後悔するケース6つと対策、後悔しないためのポイントを紹介します。メリットやデメリットを踏まえた上で吹き抜けの家を検討したい人は、ぜひ参考にしてください。
1. 吹き抜けの家にして後悔するケース6選|対策も紹介
吹き抜けとは、複数階にわたって床(天井)を設けず、縦長のスペースを確保する設計です。吹き抜けには下記のようなメリットがあることから、一般住宅の設計としても人気があります。
【吹き抜けの主なメリット】
- 開放感を演出しやすい
- 空間のデザイン性が高い
- 通気性・採光性に優れている
- コミュニケーションが取りやすい
吹き抜けを採用すると上記をはじめとしたメリットがある一方で、設計によってはデメリットや問題が生じるケースも珍しくありません。
ここでは、吹き抜けによるデメリットと、後悔しないための対策を解説します。
1-1. 冷暖房が効きにくい
部屋を2階以上の吹き抜けにすると開放感を得られる一方、エアコンで温めたり冷やしたりする空間の大きさが2倍以上になります。
床面積に合わせた性能のエアコンを1台稼働させただけでは、冷暖房が効きにくくなります。暖気は上昇し、冷気は下降する性質があるため、特に冬場は1階を温めるのが大変です。快適な温度を保つためにエアコンを長時間稼働させると、電気代がかさみやすくなるため注意しなければなりません。
冷暖房効率の低下には、下記の対策が有効でしょう。
【冷暖房効率の低下に対する対策】
- 対応面積が広いエアコンを設置する
- シーリングファンを設置する
- 空間を仕切る
- 床暖房で足元を温かくする
1-2. 生活音が響きやすい
1階と2階を仕切る天井がない吹き抜けは通気性や採光性に優れる半面、建物内の気密性や遮音性、防音性が下がりやすくなります。家の中を空気が循環しやすいことから、料理のニオイやタバコの煙も広がりやすい構造です。
また空間が広いため、音が大きく反響するケースも少なくありません。家族間のコミュニケーションは取りやすくなりますが、リビングで会話する声やテレビの音が筒抜けとなってストレスを感じる人もいます。
ニオイ・煙・音への対策としては、下記が挙げられます。
【生活音やニオイ・煙への対策】
- 防音効果が高い壁やドアにする
- 隙間から音が入りやすい引き戸は避ける
- キッチンを半個室の設計にする
1-3. 掃除やメンテナンスに苦労する
天井の高さが2階以上になる吹き抜けでは、窓や照明を高い位置に設けられます。吹き抜けは開放感のある空間が特徴であり、天井の高さを利用したおしゃれな照明や装飾品を楽しめます。
一方で、高い場所にある窓や照明、シーリングファンなどの掃除やメンテナンスがしにくいため、ホコリなどもたまりやすくなります。1階なら椅子や脚立などで対応できますが、2階分となれば転倒・転落の危険があり、気軽に上るわけにもいきません。
高所の掃除やメンテナンスをしやすくするためには、下記の対策がおすすめです。
【掃除やメンテナンスへの対策】
- 専用のベランダや通路を設置するなど、掃除・メンテナンスがしやすい設計にする
- 掃除・メンテナンスはプロに依頼する
- 長柄の掃除道具を活用し、手の届く範囲は小まめに手入れする
1-4. 2階のスペースが狭い
吹き抜けは縦におよそ2部屋分のスペースを使用します。そのため、1階部分から見れば広々とした心地のよい空間となり、こだわりのデザインを取り入れやすい点がメリットです。
一方で、2階部分は吹き抜けに使った1部屋分のスペースが少なくなります。使える土地に余裕がない場合、居住空間を確保しにくくなることが吹き抜けのデメリットです。
手狭さを感じさせないための対策の一例は、下記の通りです。
【2階スペースが狭い場合の対策】
- 1階や2階に収納スペースを確保する
- 普段使わないデッドスペースを有効活用する
1-5. 子どもやペットが転落しないか不安に感じる
吹き抜けはデザイン性が高く開放感があり、通気性や採光性にも優れた間取りです。しかしメリット優先で設計すると、安全性に不安が残るケースがあります。
例えば、2階部分や階段に取り付ける柵や手すりの幅が広かったり、柵の長さが低かったりといった具合です。転落事故が起こる可能性もあるため、特に高齢の家族や子ども、ペットがいる世帯は十分な対策が必要となります。
転落防止のための対策には、下記の方法が挙げられます。
【転落防止への対策】
- 2階にある柵や階段の手すりの幅を狭く設計する
- 転落防止ネットを設置する
1-6. 耐震性が制限される場合がある
建物の耐震性は3つの等級に分けられており、耐震等級が高いほど耐震性に優れた住宅になります。国土交通省では、構造躯体(建築構造を支える骨組み部分)の強度を示す性能表示事項を下記のように定めています。
1-1 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止) 地震に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさ 3 極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力(建築基準法施行令第88条第3項に定めるもの)の1.5倍の力に対して倒壊、崩壊等しない程度 2 極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力(建築基準法施行令第88条第3項に定めるもの)の1.25倍の力に対して倒壊、崩壊等しない程度 1 極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力(建築基準法施行令第88条第3項に定めるもの)に対して倒壊、崩壊等しない程度
引用:国土交通省「新築住宅の住宅性能表示制度ガイド」引用日2022/12/26
最近では耐震等級3を標準仕様にしているハウスメーカーもありますが、吹き抜けを作る場所や設計によっては、耐震等級3を得られないケースがあります。
例えば、吹き抜けが家の端にあったり、吹き抜けと階段がつながっていたりする間取りです。建築許可が下りる以上、最低限の耐震性は確保できます。しかし、耐震等級を重視するのであれば、計画段階から工務店などに相談しましょう。
高い耐震等級を得るためのポイントは、下記の通りです。
【耐震等級への対策】
- 柱や梁を「見せる設計」にする
- 建物の基礎を強く作る
- 耐震等級3が取得できる設計を依頼する
2. 吹き抜けの家づくりで後悔しないためには?
吹き抜けを取り入れるのであれば、メリット・デメリットに注目するだけでなく、下記の点を心がけることが大切です。
- デザイン性と機能性の両立を目指す
- 譲れないポイントを明確にする
- 工務店選びにこだわる
- 設計士に詳細な要望を伝える
ここでは、吹き抜けのあるマイホームで後悔しないためのポイントを解説します。
2-1. デザイン性と機能性の両立を目指す
吹き抜けによって生じるデメリットを軽減しつつ、デザインを損なわない機能性を持ったアイテムを取り入れるのも大切です。例えば、「冷暖房が効きにくい」「スペースが狭い」といったデメリットには、下記のような工夫が考えられます。
- シーリングファンを設置して、おしゃれさと冷暖房の効率向上を両立する
- 完全二層の吹き抜けにせず、上の階に収納を設置してデザイン性とスペースの有効活用を両立する
デザインに不満が残れば後悔につながるため、納得がいくまで検討を重ねることが大切です。
2-2. 譲れないポイントを明確にする
吹き抜けを検討する際は「どうしても我慢できない部分」を確認し、対策を立てることで後悔しない家づくりにつながります。例えば、「高所の掃除・メンテナンスに手間やお金をかけたくない」「生活音は可能な限りシャットアウトしたい」「2階に家族全員の個室が欲しい」などが挙げられます。
譲れないポイントによっては、対策を立てても許容できるレベルに達しない可能性があります。家を建ててから後悔しないためにも、吹き抜けではない間取りを選ぶのもよいでしょう。
2-3. 工務店選びにこだわる
工務店によって、得意とする住宅の形や実現できる性能は異なります。「吹き抜け」自体は同じでも、細かなデザインや付随する設備、デメリットへの対策は工務店によって千差万別です。
工務店の方向性と希望する家の形に噛み合わない部分があれば、納得のいく家になるとは限りません。工務店を選ぶ際は複数の会社を慎重に比較検討し、「理想の家を建てられる」と確信できる会社に依頼するのが大切です。
2-4. 設計士に詳細な要望を伝える
理想通りの家を建てるには、設計士との綿密なコミュニケーションが重要です。設計士は可能な限り依頼主の要望に応えようと努力してはくれますが、大雑把な指示や曖昧なイメージを的確に汲み取れるとは限りません。
例えば一口に「吹き抜け」と言っても、完全に二層を抜くか梁を残すかによって、見た目の印象が大きく異なります。頭の中に理想の形があれば、事例写真や工務店のHPなどを活用して詳細な要望を伝えるようにしましょう。
まとめ
吹き抜けで後悔するケースは「冷暖房が効きにくい」「生活音が響きやすい」「掃除やメンテナンスに苦労する」などがあります。一方で、冷暖房効率は対応面積が高いエアコンの設置、生活音は防音効果が高い壁やドアを設置して対策できます。また、高所の掃除やメンテナンスは設計段階から作業しやすい工夫をするほか、専門業者に依頼するのも1つの方法です。
吹き抜けの家で後悔しないためには、デザイン性と機能性の両立を図り、譲れないポイントを明確にした上で信頼できる工務店を選ぶのが大切です。