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セットバックとは?計算方法・注意点・不要となるケースを解説

セットバックとは?計算方法・注意点・不要となるケースを解説

セットバックとは、敷地と道路の境界線を敷地側に移動させることや、移動させた部分の土地を指します。セットバックは災害時の消防車両の通行のために設けられた接道義務に関するもので、幅の狭い道路に隣接した土地に家を建てる場合は注意が必要です。

この記事では、セットバックの基本情報を踏まえ、2パターンの計算方法と、5つの注意点を紹介します。これから家を建てるにあたって、セットバックについての知識を深めたい方はぜひご一読ください。

1.セットバックとは?

セットバックとは、建物を建設する際、敷地と道路の境界線を敷地側に後退させることです。

建築基準法第43条では、建物の敷地境界線は道路に2m以上接していなければならないという「接道義務」が定められています。接道義務の目的は、災害時に消防車両がスムーズに通行できる道幅を確保することです。

また、建築基準法第42条によると、建築基準法で認められる「道路」とは、幅員4m以上の道であるとされています。

出典:e-Gov法令検索「昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法」

つまり、住宅を建設する際は、「幅員4m以上の道路に2m以上接している」ことが必要です。

しかし、建築基準法の施行以前からある古い住宅街では、接道の幅員が4mに満たないケースもあります。そのため、建築基準法第42条2項では、例外的に以下に当てはまる道も「道路」として認めています。

  • 幅員4m未満であること
  • 建築基準法施行前から当道路に接する敷地に建物が建設されていたこと
  • 特定行政庁の指定を受けていること

出典:e-Gov法令検索「昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法」

建築基準法第42条2項に定められる道路は「みなし道路」や「2項道路」と呼ばれます。

みなし道路に接する土地に住宅を建てる場合、接道義務を果たすためにはセットバックが必要です。セットバックにより敷地の一部を道路にすることで、幅員4m以上を確保できます。セットバック工事で道路となった敷地は「私道」という扱いになります。

2.セットバックの計算方法

住宅の建設・建て替えに伴いセットバックが必要な場合、セットバッグ幅は道路幅員や立地条件などをもとに計算して求めることが可能です。

セットバック幅の計算方法は、道路の向かい側の状況によって大きく異なります。セットバックが必要な住宅を購入する際には、具体的な求め方を押さえておきましょう。

ここでは、セットバック幅の計算方法について、代表的な2つのパターンを解説します。

2-1.道路の向かい側に建物がある場合

敷地に接する道路の向かい側が宅地であり建物が立っている場合、道路中心線から水平距離で2メートルの幅員が必要です。

道路の両側に建物があるケースでは、接道義務に満たない分の幅員を両側で平等に負担することになります。つまり、それぞれが道路中心線から2mずつ幅員を確保することで、合わせて幅員4mの接道義務を満たします。

例として、道路の幅員が3mであれば、それぞれの建物が道路中心線から2mを確保するためには、0.5mずつのセットバッグが必要です。

2-2.道路の向かい側が川などの場合

道路の向かい側が川や崖地、線路などの場合は、当然向かい側はセットバックできません。そのため、反対側の道路境界線からの幅員が4mになるよう、住宅を建てる側が足りない分の幅をそのままセットバックすることになります。

例として、道路の幅員が1.5mであれば、4mに満たない分の2.5mがセットバック幅となります。

3.セットバックに関する注意点

不動産会社の広告には、セットバックが必要な土地については「セットバック要」などと記載があるケースが多い傾向です。セットバックにはいくつかの注意すべきポイントがあるため、セットバックが必要な土地や住宅の購入・建て替えを検討している人は、注意点を押さえておきましょう。

ここでは、セットバックの5つの注意点について詳しく解説します。

3-1.セットバックは拒否できない

新築住宅を建設する際は、市区町村に対して建築基準法に則った建築物であることを申請し、建築許可を得る必要があります。

セットバックが必要となる土地に住宅を建てる場合、セットバック工事をしなければ建築不可と判断されてしまい、建築許可が得られません。また、本来セットバックが必要となる土地に建設されていた住宅を建て替える場合であっても、建て替えと同時にセットバック工事をすることが建て替え工事の条件となります。

セットバックは拒否できないということを押さえた上で、慎重に購入・建て替えを検討しましょう。

3-2.セットバック部分の土地は自由に使えない

セットバック部分は私道となるため、土地の所有権は失わないものの、道路の一部として提供することになります。セットバック部分には建物の建設ができないのはもちろん、門や塀の設置、駐車場としての利用も禁止されます。セットバック部分に鉢植えを置いている光景を見かけることもありますが、本来は物を置くこともできません。

所有地として自由に使えるのは「敷地からセットバック部分を除いた面積」であることを念頭に置いて建築計画を立てましょう。

3-3.建て替え時にセットバックが必要となることがある

マイホーム購入の選択肢として、中古住宅を安く購入して建て替えを行う方法を検討する人もいるでしょう。

セットバックが必要な土地にある物件を購入すると、建て替えの際にセットバック工事が必要となります。その場合、建て替え工事費用とは別にセットバックに必要な調査・舗装などの費用も用意しなければならない可能性があるため、注意が必要です。

自治体によっては、セットバック工事の補助金・助成金が設けられているケースもあります。街づくりに力を入れている地域ではセットバック費用の補助制度にも積極的であることが多いため、事前に確認しておくのがよいでしょう。

また、建て替えに伴いセットバックする場合には、建て替え前よりもセットバックした分の敷地面積が狭くなります。建て替え前の住宅の広さを想定していると、理想通りの建て替えが叶わないこともあるため注意しましょう。

3-4.土地代にはセットバック分の費用も含まれる

セットバック幅分の敷地は私的使用はできないものの、所有権は土地の購入者にあります。そのため、セットバックが必要な土地を購入する際には、将来的にセットバックで道路になる部分も含めて購入しなければなりません。

自由に使えない土地の分も代金を支払うこととなるため、セットバック物件を購入する際にはよく検討することが必要です。

3-5.セットバック分の固定資産税は非課税である

セットバック部分は個人の敷地として使用できないことから、固定資産税や都市計画税などの税金は非課税となります。

ただし、非課税の適用を受けるには、各自治体の窓口にて申請書の提出が必要です。基本的にはどの自治体でもセットバック工事を行う前に建築指導課・道路管理課などに相談に出向くため、その際に非課税の申請についても確認しておきましょう。

4.セットバックが不要となるケース

建築基準法第42条2項に定められる「みなし道路」「2項道路」に住宅を建てる際には、セットバックが必要です。ただし、建築基準法第42条3項では、例外的にセットバックが不要となるケースについて定められています。

みなし道路であってもセットバックが不要となるのは、土地の状況により、道路の幅員4mを確保することが不可能な場合です。具体的には、以下のような例が挙げられます。

  • 傾斜地などで、道路の幅員拡大が不可能である場合
  • 公園や広場などに沿う道で、安全上・防災上の問題がない場合
  • 古くからある市街地で、「当道路沿いの建物へ入るためだけに利用され、自動車が通行しない」「通り抜け可能」などの条件を満たす場合

出典:e-Gov法令検索「昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法」

まとめ

隣接する道幅に応じて敷地を後退させるセットバックは、向かいに建物がある場合と、向かいに川や公園などがある場合で面積が異なります。なお、セットバックは拒否できないことや、土地の用途を自由に決められないこと、セットバック分の土地代も必要となる事などには注意が必要です。一方で、セットバック分の固定資産税は非課税となる点は押さえておくとよいでしょう。

なお、傾斜地など一定の条件を満たす場合は、道幅が狭くてもセットバックが不要となるケースもあります。家を建てたい土地の立地については、事前にしっかりと確認しておきましょう。