マイホームの購入は、人生で最大の買い物と呼ばれるほどの大イベントです。そのため、「本格的に家を建てたいけれど、何をどうすればよいのか分からない」と不安に思う人は多いでしょう。理想の家を建てるには、資金計画から土地探し、施工・引渡しまでの一連の流れを計画的に進めることが大切です。
今回は、家づくりに必要な費用や流れ、やるべきことについて紹介します。これから家を建てるにあたり、具体的な行動指針を決める参考にしてください。
1.家を建てるにはいくら必要?家づくりの費用相場
「令和2年度住宅市場動向調査」によると、新築住宅を建てるときには約3,800万〜4,600万円の費用が発生する傾向にあります。以下は、注文住宅と分譲戸建住宅における購入資金総額の全国平均額、注文住宅の購入資金内訳の全国平均額を示した表です。
<購入資金総額>
注文住宅 4,606万円 分譲戸建住宅 3,826万円
<注文住宅の購入資金内訳>
住宅建築資金 3,168万円 土地購入資金 1,545万円
一方、三大都市圏のみの平均額は「住宅建築資金3,383万円、土地購入資金2,211万円」
となり、地域差が見られました。
家を建てるときには、建築費用や土地代以外にも付帯工事費や諸費用がかかります。例えば、「ガス・水道管を敷地内に引き込む工事」や「駐車場や庭の外構工事」などにかかる費用が付帯工事費です。諸費用には、不動産仲介手数料や印紙税などの各種税金が含まれます。そうした費用も発生することを踏まえて、家を建てるのに使える予算を考えるとよいでしょう。
2.家を建てるにはどれくらいかかる?家づくりの流れ
注文住宅などの家を建てるには、計画から完成まで約1〜2年の期間が必要です。具体的には、以下の工程や期間を目安に家づくりが進行します。
工程 | 期間の目安 | |
---|---|---|
(1) | 家のイメージを検討する | 約1〜2か月 |
(2) | 予算を決めて資金計画を立てる | 約1〜2か月 |
(3) | 施工会社を選ぶ | 約1〜2か月 |
(4) | 土地を探して購入する | 約1〜4か月 |
(5) | 住宅ローンを申し込む | 約1〜2か月 |
(6) | 家の外観や間取りを決める | 約1〜2か月 |
(7) | 施工会社と建築請負契約を結ぶ | 約1か月 |
(8) | 細かい設備や仕様を検討・決定する | 約1〜2か月 |
(9) | 施工会社が建築を行う | 約3〜6か月 |
(10) | 引渡し後に引っ越し・入居する | 約1〜2か月 |
合計 | 約1〜2年 |
家づくりが始まると、随時細かい打ち合わせや手続きが発生します。また、着工前から引渡しの期間までにも、地鎮祭や上棟式など契約主が対応する場面があります。そのため、仕事やプライベートの予定が入ることも想定して、スケジュールにゆとりを持つことが理想です。さらに、住宅ローンの申し込みにも審査があることを踏まえ、余裕を持って準備を進めましょう。
3.家を建てるには何をすべき?考えるべきこと
家は、さまざまな工程を経て完成します。家が完成するまでには、検討・決定するべきことが多く、慌ただしさを感じる場合も少なくありません。大事な家づくりをスムーズに進めるために、以下の重要項目について、夫婦や家族間で早めに話し合っておきましょう。
3-1.家の購入予算
家の購入予算とは、あくまで家計に無理のない範囲での予算を言います。入居費や「生活費、万が一の病気や怪我に備えるお金を差し引いて考えることも重要な注意点です。
そこで、住宅ローンの返済負担率を目安に購入予算を決めることも1つの方法です。一般的には、「住宅ローンの年間返済額が年収に占める割合(返済負担率)が25%以内であれば安心」と言われています。
返済負担率25%・返済期間35年の想定で年収ごとに算出した場合の毎月返済額は、次表の通りです。なお、金利タイプは固定、金利1%、返済方法は元利均等、ボーナス時加算なしの条件で算出しています。住宅購入の目安とし、余裕を持った予算設定を行いましょう。
- ・年収400万円→毎月の返済額 83,330円
- ・年収500万円→毎月の返済額 104,163円
- ・年収600万円→毎月の返済額 124,996円
3-2.住宅ローン
住宅ローンと一口に言っても多くの種類があり、選び方もさまざまです。金利タイプや借入先の種類ごとに複数を比較し、自分に合う住宅ローンを利用することが大切です。まず、金利タイプには、以下の種類があります。
- ・変動金利型→市場金利の変化に応じて返済途中でも金利が変化する
- ・全期間固定金利型→借入期間中の金利がずっと固定される
- ・固定金利期間選択型→一定期間金利が固定され、適用期間が終了したタイミングで再度金利タイプを選択できる
また、公的ローンや民間ローン、フラット35などの「住宅ローンの借入先」に注目した選び方もあります。民間ローンは民間の金融機関が提供する住宅ローンで、その内容は金融機関ごとにさまざまです。フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して運営されています。さらに、元利均等型や元金均等型といった返済方法の違いにより、総返済額に差が出ることも注意点の1つです。
3-3.施工会社
家を建てる施工会社にも、いくつか種類があります。それぞれの特徴を踏まえ、理想の住まいに適した、信頼できる会社を選びましょう。以下の4つの依頼先から施工会社を選ぶのが一般的です。
- ・ハウスメーカー
- ・工務店
- ・設計事務所
- ・分譲系ビルダー
「ハウスメーカー」は全国で営業展開している大手の住宅会社を指すのに対し、「工務店」は営業範囲を限定して地域に密着した建設会社のことを言います。また、設計と施工管理を専門に行う「設計事務所」へ依頼する方法もあります。そして、「分譲系ビルダー」は、土地とできあがった建物をセットで購入する建売住宅を希望する場合に適した会社です。
内部リンク:「工務店選び」
3-4.土地
土地を探すときには、まず「何を基準に選ぶか」を検討する必要があります。何を重視するかは人によって異なるため、自分なりの優先順位を持つことが大切です。例えば、土地選びのエリアを限定する場合の主なポイントとしては、次の5つが挙げられます。
- ・治安の良さ
- ・通勤や通学の利便性
- ・最寄駅へのアクセス
- ・買い物施設や公共施設の充実具合
- ・災害への強さ
特に子育て世帯の場合は、自宅から最も近い学校が子どもの通う学校になると限らないため、教育委員会などに問い合わせて確認しておきましょう。ハザードマップなどを見て、災害時の安全性も確かめておくと安心です。
また、希望のエリア内で土地を決定するときにも注意点が存在します。前提として、土地には建てられる建物の大きさや高さに制限があります。希望の大きさの家が建てられる土地か、事前に調べておきましょう。
さらに、用途地域や木密地域など、地域によって建物の種類・性能に規制が設けられている場所があるため注意が必要です。住み始めてから周辺環境が変化する可能性も考慮し、将来を見据えて土地を選びましょう。
3-5.住宅性能・間取り
「住宅の性能をどの程度求め、どのような間取りを希望するか」ということも、家を建てる上で重要なテーマです。家族間でよく話し合って決めましょう。住宅の性能とは、主に以下の6つのことを指します。
- ・耐震性
- ・防火・耐火性
- ・防犯性
- ・気密性
- ・断熱性
- ・耐久性
「耐久性」は建物の劣化に対する抵抗性のことを言い、家を長期的な資産として考えるときに重要なポイントです。災害・犯罪対策や省エネルギー対策などの目的に加え、快適な暮らしのために、それぞれの性能をどの程度確保したいかを検討しましょう。
間取りを検討するときには、空間を目的別に分ける「ゾーニング」から考えるのがおすすめです。方角や周辺環境も考慮しながら、何を何階に配置するかを決めましょう。吹き抜けやリビング階段を取り入れた「コミュニケーション重視」の間取り、ロフト・屋根裏に個人スペースを確保した「プライバシー重視」の間取りなどがありますが、間取りの良し悪しは人によって異なり、人気の間取りが自分に合うとは限りません。家族の好みやライフスタイルに合う間取りを検討しましょう。
まとめ
土地探しや住宅工事の依頼先、住宅の性能・間取りなど、家を建てるには検討すべきことが数多くあります。家づくりの流れを理解し、計画的にマイホーム購入を進めましょう。また、早めに情報を集め、家族間で事前に重視するポイントを話し合う時間を持つことも大切です。