住まいの知識

注文住宅を建てる流れ|入居までの期間や支払いスケジュールも解説

注文住宅を建てる流れ|入居までの期間や支払いスケジュールも解説

注文住宅は、自分たちのこだわりや希望を取り入れた設計図にもとづいて建てられる住宅のことです。実際に間取りや設計を決定したうえで建築するため、建売住宅よりも入居までの期間が長くなる傾向にあります。

なるべくスムーズに注文住宅を建てたいのであれば、あらかじめ「注文住宅を建てる流れ」を知っておくことがおすすめです。そこで今回は、注文住宅を建てて入居するまでの流れや期間、支払いスケジュールを徹底的に解説します。注文住宅を少しでも検討している人は、ぜひ参考にしてください。

1. 注文住宅を建てて入居するまでの流れ・期間

注文住宅を建てるためには、さまざまな手続きや作業を行う必要があります。注文住宅を建てると決定してから実際に建築し、入居できるまでには概ね1年~1年半の期間が必要です。この期間は「注文住宅を建てることは決定したものの、特に何も決まっていない状態」からの期間となるため、「家を建てる土地が決まっている」「ある程度の間取りやデザインを決めている」という状況の場合はやや短くなるでしょう。

では、注文住宅を建てるための手続きや作業には具体的にどのようなものがあるのでしょうか。ここからは、注文住宅を建てるための具体的な手続きや作業について、スケジュールもあわせて順番に紹介します。なお、状況によっては行う手順が前後する可能性があることも覚えておきましょう。

1-1. 実現したい暮らしのイメージ

注文住宅を建てると決まったら、まずは実現したい暮らしのイメージを膨らませるところから始まります。「どのような暮らし方をしたいか」「どのようなデザインが理想か」をざっくりでも考えてイメージを具現化することで、土地や建物設計に関する希望のこだわりが把握できます。

暮らしのイメージ作りを行うためには、下記のポイントを参考に考えるとよいでしょう。

  • 土地・建物すべてを含めて「譲れない条件」はあるか
  • 想像している建物のデザインはどのような雰囲気か
  • 治安・利便性・アクセスのどれを最も重視するか

まずは上記を優先して考えることで、その後の細かなこだわりも把握しやすくなります。

また、これらは家族全員で考えて意見をまとめておくことも大切です。あらかじめ意見をまとめておくことで、その後に行う土地探しや住宅の打ち合わせがスムーズとなります。

1-2. 予算・資金計画の立案

実現したい暮らしのイメージを膨らませたあとは、実現に向けてそれが現実的に行えるのかどうかを明確にしなければなりません。そこで最も重要となるのが「予算・資金計画」です。

予算をふまえて資金計画を立案するためにはまず、現在の貯蓄額・自己資金額を把握し、「頭金としてどれくらいの額をまわせるか」「毎月、無理なく返済できる額はいくらか」を考えて予算の目途を立てましょう。立てるべき予算項目は、土地と建物の2つです。土地相場は、住みたいエリアの地価相場を参考にすることをおすすめします。

住宅は、基本的に住宅ローンを借りて購入するケースが一般的です。無理なく返済できる額を考える際は、住宅ローンの借入期間とあわせて考えるとよいでしょう。借入可能額や返済額の試算は、住宅保証機構株式会社が提供している住宅ローンシミュレーションツールの利用がおすすめです。

(リンク:住宅保証機構株式会社「住宅ローンシミュレーション」

なお、実現したい暮らしのイメージづくり・資金計画の立案にかかる期間は、半月~1か月程度と考えておきましょう。

1-3. 土地探し

実現したい暮らしのイメージと、イメージにあわせた予算・資金計画の立案がある程度完了すれば、いよいよ土地探しが始まります。自分たちで探すことも可能ですが、なるべくスムーズに好条件の土地を探したいのであれば、住みたい地域の不動産会社に相談することがおすすめです。

土地探しの際は、より具体的に希望条件をつけることも重要となります。土地の広さや周辺環境だけでなく、学区や買い物の利便性など、実際の暮らしをイメージしながら理想を見つけるとよいでしょう。また自然災害の多い近年では、ハザードマップ情報もチェックしておくべき要素となります。

希望条件をすべて満たした土地はほとんどないため、いくつかの希望を妥協しながら絞り込む形となるでしょう。判断に迷ったら、実際にその土地まで足を運ぶこともおすすめです。

1-4. 工務店探し

購入する土地がある程度決定したら、次は自分たちがイメージする住宅を建ててくれる工務店やハウスメーカー・住宅建築会社を探します。工務店探しのコツは、「モデルハウスを見学すること」です。また、自分たちにとって最も重要とするポイントは何かを考えたうえで、そのポイントを強みとした工務店を選ぶことも大切といえます。

なお、土地探しと工務店探しは順番に行うのではなく、同時に行ったほうがよいケースもあります。土地によっては建築基準法などの法律・規制により建てられる住宅が限られる可能性もあり、同時に行うことで「建築」に関する視点も含めた土地選びが可能となるためです。中には、不動産会社が施工も請け負うケースもあります。

土地探し・工務店探しにかかる期間は、2~3か月程度と考えておきましょう。

1-5. 土地の調査・購入

希望の土地と工務店が決まったら、次は土地の調査・購入に進みます。土地の調査には、どのような家を建てられるかを調べる「敷地調査」と、地盤の強度を調べる「地盤調査」の2種類があります。

敷地調査では、敷地の測量を行って土地の正確な面積・形状を把握したうえで、法的観点からその土地に希望の住宅が建てられるかを調査します。上下水道やガス・電気の配管もこの時点で調査することが基本です。敷地調査のあとは、地盤調査として地盤の強度を調査します。地盤調査は、建築基準法により建築前の調査が義務付けられています。

これらの調査は、土地購入・契約後に行われることが一般的であることに注意してください。土地の調査・購入にかかる期間は、1~2か月程度と考えておきましょう。

1-6. 間取りの打ち合わせ・見積りの依頼

希望の土地を契約し、各調査が終了したあとは、いよいよ住宅のプランニングが始まります。家族それぞれのこだわりを話し合ったうえで、工務店や設計会社の担当者との打ち合わせを進めましょう。

間取りや設計の打ち合わせは、注文住宅の全スケジュールの中でも最も長引きやすい項目です。スムーズにプランニングを進めるためにも、家族全員の理想を具現化し、出したこだわりに優先順位をつけておきましょう。優先順位をすべて決められないという場合は、ある程度のこだわりを出して担当者に相談するだけでも、おすすめの施工方法を提案してくれる可能性があります。

住宅設計が決定したら、見積りを依頼します。かかる期間は人によって大きく異なることが特徴で、早くて3か月(打ち合わせ10回程度)、遅くて6か月(打ち合わせ25回程度)ほどかかります。

1-7. 工事契約の締結

住宅の間取りやデザインが決定したら、工事契約の締結に進みます。契約の際は、見積書・設計図・工事請負契約書・工事請負契約締結所などの書類が渡されることが基本です。これらの書類にすべて目を通してサインをすれば、工事契約が完全に締結されます。

このとき、渡された書類に不備があり契約後に変更を依頼した場合は、契約変更による追加費用が発生したり、予定していた工期が伸びたりする可能性があります。そのため、契約内容を隅々までしっかりチェックしておくことがおすすめです。また、場合によっては工事契約の締結時点で建築費用の1割程度の手付金が必要となるケースもあることを覚えておきましょう。

1-8. 決定したプランの再確認と住宅ローンの事前審査

工事契約を締結したあとは、建築を進めるうえで必要となる詳細な打ち合わせを行います。具体的には、決定した建築プランの再確認という側面が強い項目となるでしょう。

また、このとき住宅ローンを借りる金融機関選びも行います。住宅ローンを借りる際は、必ず事前審査(仮審査)と本審査(正式審査)の2段階があり、本審査は建築確認の申請後に行うことが基本です。なるべくスムーズに住宅ローン審査を済ませるためには、この時点で事前審査を通しておくとよいでしょう。

詳細についての打ち合わせにかかる期間は、1~2週間程度と考えておきましょう。

1-9. 建築確認の申請

工事請負契約を締結し、詳細についての打ち合わせも完了したら、市区町村へ建築確認の申請を行います。建築確認申請は、設計した住宅プランが建築基準法などの法律に適合しているかの確認審査を受けるために必要です。

建築確認が行われ、指定確認検査機関から建築確認済証の交付を受けられれば、建築工事に着工できます。建築確認の申請後は、間取りや設備の変更ができない点に注意してください。また、建築確認をクリアできなかった場合は、問題点を改善したうえで再申請しなければなりません。再申請には追加費用が発生することにも注意が必要です。

建築確認の申請・審査にかかる期間は、2~3週間程度と考えておきましょう。

1-10. 住宅ローンの申込・審査

建築確認の審査が完了し、建築確認済証を交付してもらったら、住宅ローンの本申込を行います。事前審査を行った金融機関で本審査を申し込みましょう。

住宅ローンには、基本的に固定金利型と変動金利型の2種類があります。本申込に通ったあとは簡単に借入条件を変更することができないため、自分たちに適した金利タイプは何か、無理なく返済できる借入額や借入期間はどのくらいかを十分に話し合ってから住宅ローンの借入プランを決定することがおすすめです。

住宅ローン契約(本申込~審査)にかかる期間は、2週間程度と考えておきましょう。

1-11. 住宅の工事開始

建築確認済証の交付を受け、住宅ローンの本審査もクリアしたら、いよいよ注文住宅の着工です。

工事が始まると騒音が発生するため、着工前には近隣住民に挨拶をすることが常識となっています。近隣住民へのあいさつは本人たちが行うことはもちろん、施工会社の現場監督に一任することも可能です。着工前の地鎮祭や骨組み完成後の上棟式の実施有無は、施主である住宅の持ち主が自由に選択できます。

着工中は基本的に待つのみですが、工事中の現場に足を運ぶこともおすすめです。建築途中の住宅を実際に目で確認することで、マイホームへの愛着が増すだけでなく職人が柔軟な対応を行ってくれる可能性もあります。

1-12. 住宅の竣工・引き渡し

マイホームが竣工したら、いよいよ引き渡しのできる状態となります。しかし、竣工したらすぐ引き渡しとなるわけではありません。引き渡しの前には、「完成立会い」として施工会社の担当者・管理者とともに完成した住宅をチェックする工程をはさみます。このとき、屋根や天井、壁、床、設備に汚れや破損がないかを確認します。

加えて、特定行政庁または第三者機関によって建築基準法にもとづいた「完了検査」も行います。これらのチェックが済んだあとに、住宅の鍵や保証書などが渡されていよいよ引き渡しとなります。

入居後の点検やアフターメンテナンスは、建築を担当した施工会社により行われます。建築を担当した施工会社とは長い付き合いとなるため、今後のアフターメンテナンスの対象範囲や相談窓口などにおいては、引き渡しの時点で確認しておくことも重要です。

住宅の工事開始から引き渡しまでにかかる期間は、6か月程度と考えておきましょう。

2. 注文住宅の支払いスケジュール

注文住宅を建てる場合、建築費は3~4回に分割して支払うことが基本です。金額やタイミングなどの支払い条件は工務店によって細かに異なりますが、下記のようなスケジュールが目安となります。

タイミング 項目 費用
契約時手付金建築費用の約5~10%
着工時中間金建築費用の約30%
着工中中間金建築費用の約30%
竣工時残代金建築費用の約30~35%

注文住宅を建てる場合の工事費用は、決して安価ではありません。各タイミングの費用割合だけを見るとさほど大きな費用ではないように思えますが、中間金だけで2,000万円以上の費用を支払わなければならないというケースもよくある話です。

2-1. 住宅ローンを組むまでの流れ

注文住宅を建てるためには、住宅ローンを借りることが一般的です。ここでは、住宅ローンを借りるまでの流れを紹介します。

(1)住宅ローンに関する情報収集

住宅ローンは、さまざまな金融機関から提供されているローン商品の1つです。自分に合った住宅ローンを借りるためには、関連情報の収集が欠かせません。インターネットで情報を収集することはもちろん、セミナーに参加するなどして、住宅ローンを借りるにあたって必要となる情報を集めましょう。金融機関に直接相談すれば、より具体的な提案を受けられます。

(2)事前審査

住宅ローンを借りる金融機関を選んだら、住宅ローン申請手続きを行い事前審査を受けます。事前審査では、申込者の年収や自己資金、勤め先などさまざまな情報が聞かれるため、虚偽なく申告するようにしましょう。なお、事前審査を受けられるタイミングに決まりはなく、土地の決定前でも可能です。住宅ローンを借りるためには必ず事前審査を行わなければならないため、おおよその必要な借入金額が定まった適切なタイミングでなるべく事前審査を済ませておきましょう。

(3)本審査

事前審査をクリアし、具体的な住宅設計プランも完了したあとは、住宅ローンの本審査に進みます。本審査では事前審査よりもさらに詳細な情報にもとづいた審査が行われます。団体信用生命保険の加入により、本審査では健康状態なども加味されることを覚えておきましょう。なお、本審査の期間は事前審査よりも1~2週間程度長くなることが一般的です。

(4)契約・融資実行

本審査の承認を受けたら、金融機関と「金銭消費賃借契約」を締結します。金銭消費賃借契約の締結は、実際に金融機関の窓口に出向いて行うことが基本です。その後、いよいよ融資が実行されます。住宅ローンでは抵当権を設定することから、基本的に融資実行日は物件引き渡し日となります。融資が実行されたら、翌月または翌々月からローン返済が開始します。

2-2. 住宅ローン開始までに利用する「つなぎ融資」とは

前述の通り、住宅ローンの融資実行日は基本的に物件の引き渡し日です。しかし、物件の完成前には「手付金」「中間金」「中間金」「残代金」として、建築費用を支払わなければなりません。これらの費用をすべて自己資金からまかなえる人は、一握りといえるでしょう。

建築費用を自己資金からまかなえないという場合は、「つなぎ融資」の利用がおすすめです。つなぎ融資とは、住宅ローンの融資実行日、いわゆる物件が完成して引き渡される日までの間に必要となる資金を一時的に借りられるローンのことです。物件の完成前に支払わなければならない建築費用のほか、土地の購入代金にもまわせます。

つなぎ融資を利用した分は、住宅ローンの融資実行日に利息・事務手数料などの諸費用を含めてすべて返済する必要があります。工期の延長などにより物件引き渡し日が延期した場合はつなぎ融資の利息が増える点と、つなぎ融資に対応する金融機関は限られている点に注意が必要です。

つなぎ融資のより詳しい情報については、下記のページで詳しく解説しているため、あわせてぜひ参考にしてください。

つなぎ融資とは?利用時の注意点や流れを解説

まとめ

注文住宅をなるべくスムーズに建てるには、あらかじめ流れを知っておくことが重要です。基本的に注文住宅を建てるために必要な期間は1年~1年半程度ですが、資金計画や打ち合わせが難航した場合などはそれ以上の期間がかかる可能性があることも覚えておきましょう。

また、同時に注文住宅の支払いスケジュールについても考慮しておく必要があります。建築費用が高くなりやすい注文住宅においては、資金計画を綿密に立てて行動することも重要です。ここまでの内容を参考に、地域密着型の工務店にてぜひ注文住宅購入の計画を立ててみてはいかがでしょうか。