住宅ローンの知識

つなぎ融資とは?利用時の注意点や流れを解説

つなぎ融資とは?利用時の注意点や流れを解説

注文住宅を建てる際には、住宅の引き渡しまでに支払わなければならない費用が発生します。住宅ローンの融資が行われるまでに必要な費用を、自己資金だけではまかなえない場合に、利用を検討したいのが「つなぎ融資」です。

この記事では、つなぎ融資の概要とメリット・デメリット、利用の流れや具体的なシミュレーションを解説します。また、つなぎ融資の使用にあたって注意したい4つのポイントも紹介するため、注文住宅の建築を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

1.つなぎ融資とは?利用するタイミング

「つなぎ融資」とは、注文住宅の引き渡し前に必要な土地代金などの資金を、一時的に立て替えるためのローンです。つなぎ的な役割を持つため、このように呼ばれています。

通常、住宅ローンは完成した住宅の引き渡し時に融資が行われます。しかし、注文住宅を建築する場合は、建築費用を分割で支払うため、住宅ローンの融資実行までにある程度の資金が必要です。

住宅ローンの借入金が手に入る前に、支払わなければならない費用の立て替えに利用されるのが、つなぎ融資です。つなぎ融資は、土地の購入時や注文住宅の着工時、上棟時、竣工時など、まとまった金額を支払うタイミングで利用されます。

1-1.つなぎ融資を利用するメリット・デメリット

ここでは、つなぎ融資を利用する場合のメリット・デメリットをそれぞれ紹介します。

【メリット1】自己資金の用意が必要ない

注文住宅を建てるための資金が手元にない場合、自力で貯金するにはかなりの時間を要します。しかし、つなぎ融資を使用することで、自己資金の用意が難しい場合でも注文住宅の建築が可能です。

【メリット2】団体信用生命保険に加入できる

住宅ローンと同様に、つなぎ融資を利用する場合にも団体信用生命保険に加入できます。工期中、発注主に万が一の事態が起こってもローンを完済できるため、不安なく住宅の完成を待てます。

【デメリット1】住宅ローン控除が適用されない

住宅ローン控除の適用条件は、住宅完成後6か月以内に入居して、その年の12月31日まで引き続き入居していることです。そのため、通常は住宅に入居する前に行われるつなぎ融資には、住宅ローン控除が適用されません。

出典:国税庁「No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」

【デメリット2】工期が長引くと金利が増える

つなぎ融資の金利は高めに設定されていることが多いため、工事の期間が延びればそれだけ利息の負担が増えます。そのため、工事期間の遅れなど不測の事態に対する備えが必要不可欠です。

2.つなぎ融資を利用する場合の流れ

ここでは、つなぎ融資を利用する流れを、6つのステップに分けて説明します。

1:「いつ、何に、いくら」必要なのか確認する

土地購入から住宅引き渡しまでの期間に、「いつ、何に、いくら」資金が必要なのかを確認します。つなぎ融資が必要であることが分かった場合、借入条件もあわせてチェックしておくのもおすすめです。

2:住宅ローン・つなぎ融資を申し込む

土地選びが終わったら、工務店やハウスメーカーと建築プランを話し合い、請負契約を交わします。契約の締結後、住宅ローンとつなぎ融資をあわせて申し込みます。

3:つなぎ融資の契約を交わす

審査によって住宅ローンとつなぎ融資が承認されたら、土地の売買契約を交わし、住宅ローンとつなぎ融資の契約を締結します。

4:土地の購入代金を支払う

土地の購入につなぎ融資を利用する場合は、1回目のつなぎ融資が行われ、土地購入代金を支払います。

5:請負契約にもとづく支払いを行う

つなぎ融資の利用で用意した資金を使って、請負契約にもとづく着工金や上棟金などを支払います。

6:つなぎ融資を一括返済する

完成した住宅の引き渡し時に住宅ローンの融資が実施されます。入金された住宅ローン借入金を使って、つなぎ融資の全額を一括で返済します。

具体的な利用の流れは金融機関によって異なる場合があるため、実際につなぎ融資を利用する際は各金融機関に相談してください。

3.つなぎ融資を利用する場合のシミュレーション

土地の購入から住宅の引き渡しまでの期間を6か月間として、つなぎ融資を利用する際に、返済する利息のシミュレーションを具体的に紹介します。

つなぎ融資シミュレーションの前提条件
  • ・土地の購入価格:1,500万円
  • ・建物の価格:3,000万円
  • ・つなぎ融資の金利:3%(融資期間中の金利は変動なしとして計算)

住宅の引き渡しまでに支払う金額は、以下のようなケースを想定します。

  • ・土地の購入価格:1,500万円
  • ・着工金(建物価格の3割の場合):900万円
  • ・上棟金(建物価格の3割の場合):900万円

また、着工金の融資期間を4か月、上棟金の融資期間を3か月として計算すると、返済する利息は以下の金額となります。

・土地の購入価格の利息

1,500万円×金利3%÷365日×180日(6か月)=約22万円

・着工金の利息

900万円×金利3%÷365日×120日(4か月)=約9万円

・上棟金の利息

900万円×金利3%÷365日×90日(3か月)=約7万円

例えば着工金の900万円を支払う場合、通常は諸費用や利息を差し引いたものが融資されるため、実際のつなぎ融資の借入金額は900万円よりも少なくなります。そのため、自己資金の準備が少なからず必要です。

4.つなぎ融資を利用する場合の注意点4つ

つなぎ融資を利用すると、住宅を建てる際の経済的な負担を減らすことが可能です。ただし、つなぎ融資を利用する場合にはいくつかの注意点があります。ここでは、主な注意点を4つ紹介します。

●利用には諸費用が発生する

つなぎ融資を利用する際には、利息のほかに諸費用がかかります。具体的には、融資の手続きのための事務手数料や契約書類に貼付する収入印紙代、団体信用生命保険料などです。

諸費用の種類や金額は、つなぎ融資の借入額や利用する金融機関ごとに異なります。つなぎ融資を利用する資金計画を立てる際には、利息だけではなく諸費用についての考慮が欠かせません。

●金利が割高な傾向にある

ローンの期間は数か月~1年ほどと比較的短い期間ではあるものの、つなぎ融資の金利は住宅ローンなどよりも割高な傾向にあります。

住宅の購入はとても大きな買い物であるため、可能な限り金利の低い金融機関を選ぶことが大切です。金利と借入期間を確認し、あらかじめつなぎ融資の利息を計算しておきましょう。

●融資限度額・回数に制限がある

融資額や回数に制限が設定されているのも、つなぎ融資の注意点です。例えば、「最大で〇万円」などと定めている金融機関もあります。

特に、複数回のつなぎ融資の利用を検討する場合は、融資の上限回数や1回あたりの融資上限額についての詳細な情報を事前に金融機関に問い合わせましょう。

●対応していない金融機関がある

基本的に、つなぎ融資と住宅ローンはセットで契約を結びます。しかし、住宅ローンについては多くの金融機関で対応していますが、つなぎ融資を扱っている金融機関は少ないのが実情です。特に、ネット銀行などではつなぎ融資を行っていないケースがあるため、注意が必要です。

つなぎ融資の利用を前提に住宅の建築を考えている場合は、つなぎ融資の取り扱いがある金融機関かどうかを、必ず事前に確認しましょう。

まとめ

つなぎ融資を利用すると、住宅の引き渡しまでにかかる費用を一時的に立て替えてもらえます。自己資金の用意が難しい場合に経済的な負担を軽減できる一方で、金利が高めに設定されている点などには注意が必要です。

つなぎ融資の期間中は、工事の進捗がとりわけ気になります。注文住宅を建てる場合は、工事の進捗状況をいつでも確認できるような工務店を選ぶことが、工期延長により発生するリスクを管理できます。工務店を選ぶ際には、工事の様子をいつでも確認できるようなところを選びましょう。