初めて注文住宅を購入する方にとって、何かと不安は大きいものです。購入を検討する中で、「大工さんは家をどのようにして建てるのだろう?」と疑問を持つこともあるでしょう。
この記事では、家づくりの具体的な手順や、依頼主が注意しておくポイントについて解説します。家の建て方と手順ごとの意味を知っておくことで、適切な仕事をしてくれる大工や専門業者を選びやすくなります。家を建てる際の不安や疑問を、少しでも取り除きたい方は、ぜひ参考にしてください。
1.家を建てる手順|大工の仕事の注目ポイントも
「家を建てる」と聞くと、すべての役割を大工が担っているというイメージが思い浮かぶかもしれません。しかし実際は大工がすべての仕事を行っているわけではなく、さまざまな専門業者や建設会社が協力し合って家は完成します。
ここでは、家を建てる新築工事での具体的手順を解説します。
1-1.地質調査
家を建てる場所の地盤状況を把握するために地質調査を行います。地盤の弱い場所に家を建てると、地盤が沈んで家が傾いてしまうことになりかねません。
のちのちのトラブルを防ぐためには、地盤の強さをあらかじめ調査しておく必要があります。なお、地質調査は大工ではなく地質調査業に携わる専門業者が行います。
1-2.仮設工事
地質調査で問題がなければ、建設会社などによる仮設工事が始まります。仮設工事は、工事を円滑に進めるため一時的に設備や施設を設置することです。仮設工事では、主に建物の配置決めも行われます。
仮設工事で行うことの1つが、建物の壁に沿って縄を張る「地縄張り」です。地縄張りを行うことによって、建物の位置や大きさ、形を工事前に把握することが可能となります。仮設工事で設置した設備などは、工事の完了次第撤去されます。
1-3.基礎工事
次は基礎工事会社による基礎工事を開始します。基礎工事は、地盤と建物のつなぎ目となる建物の基礎部分をつくる工事です。
建物の重みや地震の揺れなどによって、建物が一部分だけ沈んでしまうのを防ぐためには、建物から基礎を経由して地盤へ衝撃を受け流す必要があります。そのため、建物の土台をつくり上げる基礎工事は、家を建てる手順の中でも特に重要となります。
1-4.土台・棟上工事
建物の頑丈さを決める土台部分の後、家の最も高い場所に棟木という木材を取り付ける「棟上」を行います。この工程から、大工の仕事の割合が増えます。
建物の土台をつくる上で特に注意しなければならないことは、次の2つです。
・シロアリ対策
シロアリが土台を食べることで建物の耐震性が弱まり、地震が発生した際に建物の倒壊や激しい損壊が起きる恐れがあります。これを防ぐためには、シロアリが寄り付かないよう環境を整える必要があります。
・防腐処理
材木が腐らないように防腐処理を行うことも重要です。土台は、漏水や浸水などによって腐食が進みやすい部分です。土台が腐ると、建物が脆くなり、地震や強風による倒壊や損壊のリスクが高まります。
湿度が高い日本では、シロアリが繁殖しやすく、木材の腐食も進みやすいため、とりわけ注意が必要です。頑丈な家づくりのためには、土台づくりの時点で、業者がどのように対策しているかをしっかりと確認するようにしましょう。
1-5.屋根・内壁・外壁工事
土台や骨組みの完成後は、屋根や内壁・外壁工事の工事です。現場に置かれた資材を雨に濡らさないよう、最初に屋根の工事を行います。
屋根をつくる際は、家の天井部分に垂木と呼ばれる材木を使った骨組みづくりから始めます。垂木とは、いわば「木の棒」のようなものです。サイズや間隔をしっかりと合わせて垂木を組むことで、丈夫な屋根の土台を作りあげることができます。
その後垂木の上に、強度の高い木材を貼り付けます。雨漏りしないよう防水性の高いシートで屋根全体を覆い、屋根材を取り付けると屋根は完成です。
屋根の完成後は、内壁と外壁の工事に取り掛かります。外壁には屋根と同じく水を通さないシートを貼り、「サイディング」と呼ばれる外壁材を取り付けます。
1-6.仕上げ工事
最後に、タイル・クロス貼りや、照明などの設備取り付けなどを行い、家を完成させる仕上げ作業を行います。「クロス貼り」は壁や天井に布を貼って仕上げる作業、「タイル貼り」は陶磁器素材のタイルを貼る作業を指します。
壁や天井のほかにも、ドアや窓、収納、押入れ、階段、床、手すりなど、家の中にあるさまざまなものをつくります。仕上げ工事は、主に目に見える部分をつくる工程であり、住み心地に直結するため、色・質感・デザインなど、事前によく相談しておくことが大切です。
工事の後半では、仮設工事で設置した足場などの撤去も行います。なお、内装工事や足場の撤去は大工ではなく専門業者が行うことが一般的です。
2.家を建てる手順の中で依頼主が注意すべき点
実際に家を建てるのは工務店のスタッフや大工であるものの、任せきりにするとのちのちトラブルが生じるケースがあります。そのため、依頼主も家づくりに関する知識を身につけ、工事が適切に行われているか確認し、スムーズな工事をサポートする姿勢が大切です。
ここでは、よりよい家を建てるために、依頼主が注意しておくポイントを3つ紹介します。
2-1.基礎工事の時期
安全に長く住める家づくりで、最も大切な部分となる基礎は、鉄筋コンクリートでつくられることが一般的です。鉄筋コンクリートは、激しい雨や暑さ寒さといった外部の環境によって強度が下がるという弱点があります。
そのため夏や冬、梅雨の時期に着工するのは避けることがおすすめです。一方で、春や秋は、基礎工事を行う最も望ましい時期となります。思い立ったタイミングで家を建てるのではなく、長く住むことを見据え、時期を含めた適切な計画を提案してくれる業者を選びましょう。
2-2.配管や配線の位置
配管や配線の位置設計を誤り、実際に住んでから暮らしにくいことに気づくケースがあります。例えば、コンセントの位置が悪かったり、数が少なかったりすると、家電を効率的に使えない恐れがあります。また、水道管や排水管の位置が適切でないと、キッチン・浴室・ランドリールームなどの動線が悪くなるでしょう。
さらに、壁や床に埋め込まれる配管や配線は、後から変えることが難しいため、事前の対策が必須です。着工前にしっかりと打ち合わせを行い、どうしても変更したい場合は、なるべく早く業者に相談することが大切です。
2-3.地鎮祭や上棟式の開催
地鎮祭は、工事が安全に進むことを願う儀式です。一方上棟式は、工事の途中で「それまでの工事を無事に終えられたこと」に感謝する儀式になります。
地鎮祭や上棟式などの準備は工務店やハウスメーカーが行ってくれる場合がほとんどですが、任せきりにすると思わぬトラブルが発生することがあります。また、家づくりに関わる大工が集まる上棟式は、行わない業者もあるものの、実施する場合はマナーなどにも気を配ることが必要です。
さらに、業者や地方によって儀式の手順や作法が異なる場合もあるため、事前に工務店やハウスメーカーに詳細を聞いておきましょう。
まとめ
家づくりは、大工だけでなくあらゆる専門業者や工務店が協力し行われる工事です。家を建てる上では、建設の具体的な手順とその中で注意すべきポイントを知っておくことが重要となります。
地震が多く、湿度の高い日本では、建物を支える基礎工事と、適切な材木の取り扱いが重要です。丈夫な家を建てたい場合は、国産の耐久性の高い素材を使用する業者や、取扱いに慣れた大工に依頼するとよいでしょう。