住宅を建てる際、ほとんどの場合で住宅ローンを組むことになります。住宅ローンを組む方法には「自分で金融機関に出向く」がありますが、中には「工務店を経由して申し込むこともできる」と見聞きしたことがある方もいるのではないでしょうか。
当記事では、工務店で家を建てる際の住宅ローンの申し込み方法について紹介します。また、固定金利と変動金利の違いや審査基準など、住宅ローンの基礎知識も分かりやすく解説します。工務店で住宅の建設を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
1. 住宅ローンは工務店経由で申し込める?
多くの工務店・ハウスメーカーは金融機関と提携を結んでおり、顧客に対して住宅ローンの紹介を行っています。金融機関に出向く必要がなく、工務店やメーカー経由で申し込むことができるため「提携ローン」と呼ばれます。
利用する工務店に提携先の金融機関がある場合でも「提携ローンを組まなければならない」というルールはありません。工務店を通さずに自分で申し込みをすれば、提携外の金融機関でローンを組むことが可能です。それぞれのメリットを確認し、自分に合った方法を選択しましょう。
1-1. 工務店・ハウスメーカー経由で申し込むメリット
工務店・ハウスメーカー経由で提携ローンを申し込むメリットは、以下の3点です。
審査がスムーズに進みやすい |
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工務店と金融機関の間には実績と信頼関係がある上、段取りができているので審査がスムーズです。そのため、審査にかかる日数も比較的早くなります。 |
手続きをサポートしてもらえる |
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書類の用意や金融機関との日程調整など、手間に感じる手続きの一部を工務店に代行してもらえます。また、記入についての相談にも乗ってくれるため、安心感を持って審査を受けられるでしょう。 |
選ぶ手間が省ける |
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国内の住宅ローン商品は数が多く、自分で選ぶ際は下調べだけでも時間と労力が必要です。ローン選び・金融機関選びの手間を省くことで、設計といった他の部分に時間を使えます。 |
1-2. 自分で金融機関を探して申し込むメリット
自分で金融機関を探して申し込むメリットは、以下の3点です。
選択肢の幅が広くなる |
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住宅ローンと一口に言っても、種類が多くそれぞれに異なった特徴があります。多くの商品の中から比較しながら選ぶことができる分、よりよい条件のローンと巡り合う可能性が高まるでしょう。 |
代行手数料などが発生しない |
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工務店を通して申し込みすると、「住宅ローン代行手数料」や「司法書士手数料」として5~10万円ほど費用が上乗せされます。自分で金融機関を探して手続きすれば手数料が発生せず、その分を住宅資金に充てることが可能です。 |
住宅ローンに関する意識が高まる |
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自分で金融機関を選ぶときは、返済の仕組みや金利といった住宅ローン制度に関する下調べが必要です。しっかりと内容を理解した上で契約を結ぶことで、計画的な返済に対する意識が高まります。 |
2. 中にはフラット35を提供している工務店も
フラット35とは、国民生活の安定と社会福祉の増進を目的とした独立行政法人である「住宅金融支援機構」が提供しているサービスです。保証人や繰上返済手数料が不要となっており、計画的に繰上返済をしたい方などに向いています。
(出典:住宅金融支援機構「フラット35」)
基本的には金融機関での取り扱いとなり、工務店独自で提供している事例は多くありませんが、「一条工務店」など一部の工務店ではフラット35を使って契約ができます。
(出典:一条工務店「i-flat」)
2-1. 固定金利と変動金利の違い
住宅ローン利用の金利は「固定金利」と「変動金利」の2種類です。フラット35は全期間固定金利ですが、民間ローンの場合にはどちらの金利パターンにするか選んで契約をします。
固定金利 | 決められた年数、借入当初の金利が継続される |
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【特徴】
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変動金利 | 一定期間ごとに適用金利が見直され、金利が変動する |
【特徴】
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固定金利と変動金利には、それぞれに異なるメリットがあります。返済シミュレーションやローンシミュレーションなどを行い、それぞれのライフスタイルにあった金利型を選ぶことが大切です。
参考までに、令和元年度の民間住宅ローン利用者の63.1%が変動金利型を選択しており、フラット35(全期間固定金利型)の利用は全体の4.6%です。
3. 住宅ローンには「仮審査」と「本審査」がある
住宅ローンでは審査が行われます。審査には「仮審査」と「本審査」があるため、それぞれの審査で何を確認されるのかあらかじめ把握しておきましょう。
1 | 仮審査(事前審査) |
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審査基準
所要期間の目安:即日~1週間程度 |
2 | 本審査 |
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審査基準
(完済時年齢、借入時年齢、勤続年数、年収、雇用形態、業種、家族構成、所有資産、雇用先の規模) (債務状況、返済履歴、クレジットカードや消費者金融の契約内容、申し込み履歴) 所要期間の目安:2~3週間程度 |
(出典:国土交通省「令和2年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」)
仮審査では主に「返済負担率」や「事故情報の有無」を確認し、本審査に進めるかどうかを判断します。本審査では、個人情報や個人信用情報の細かい部分まで念入りに確認されます。
3-1. 住宅ローンに申し込む際に必要となる書類
住宅ローンに申し込む際は、下記の書類を準備する必要があります。
仮審査 | 本審査 |
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(運転免許証、パスポート、住民基本台帳) (前年度の源泉徴収票、課税証明書、決算報告書、確定申告書、所得税納税証明書) (他に借入がある場合のみ) |
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仮審査で必要な書類は写しでも問題ありません。原本は本審査で提出しましょう。
本審査の際は細かい部分まで確認されるため、幅広い種類の書類が必要となります。時間の余裕があるうちに準備しておくとよいでしょう。
3-2. 住宅ローンの審査基準|落ちた場合の対処法
審査基準の項目は多岐にわたりますが、中でも重要とされる5つについて基準を解説します。
返済負担率 |
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年収に占める年間返済額の割合のことを「返済負担率」と言います。目安は30~35%以内であり、「負担率が高い=返済見込みが低い」と判断されるため、収入とのバランスが大切です。 |
個人信用情報 |
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クレジットカードや消費者金融などの利用履歴、延滞の履歴、現在の借入額が確認されます。過度の滞納や踏み倒しなどの履歴は半永久的に保存され、審査に不利に働きます。 |
健康状態 |
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生命保険の加入を条件に住宅ローンの契約を結ぶという金融機関が多いため、告知事項がなく健康状態がよいことも重要なポイントです。 |
勤続年数 |
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一般的な目安として3年以上の勤続年数が基準と言われています。しかし、年齢や転職の一貫性なども考慮され、安定した収入が得られている場合には3年未満でも問題ないケースがあります。 |
虚偽記載の有無 |
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年収や勤続年数、借入額など「審査に通りたい」という一心で申告内容を偽ることは絶対にやめましょう。虚偽記載が判明した場合はすぐに審査落ちとなります。 |
審査に落ちてしまった場合は、下記のポイントを検討することが効果的です。
- 借入額を低くする
- 頭金(自己資金)を増やす
- 収入合算やペアローンを検討する
借入額の減額や頭金の増額をすると「返済負担率」を下げることにつながります。返済負担率が高ければ貸し倒れのリスクが高まるため、審査を有利に進めることができません。
土地選びや住宅価格など、建築費用を見直すなどして少しでも返済負担率を下げる方向で検討を進めましょう。また、同居者がいる場合には収入合算やペアローンを利用するという方法もあります。
まとめ
住宅ローンを申し込む際は、下記の内容を押さえることが重要です。
- 住宅ローンを申し込む方法は「工務店経由で申し込み」「自分で金融機関を探す」
- 住宅ローンの金利パターンは「固定金利」と「変動金利」の2つ
- 高額な契約となるため、審査は2段構えで行われる
- 審査突破のポイントは“収入と返済のバランス”
住宅ローンは借り入れる金額が高額で、返済期間も20~30年と長くなります。申し込み方法ごとのメリットや金利パターンといった「住宅ローンの知識」を頭にいれた上で、自分のライフスタイルにあったローンを申し込みましょう。