多くの人にとって、マイホームの購入は人生に1度きりのビッグイベントです。引き渡されたマイホームを前に「ずっとこの家に住み続けたい」「この家で一生を終えたい」と考える人は少なくありません。そのため、どのハウスメーカーを選んで依頼するかは、快適な住生活の実現に欠かせない要素と言えるでしょう。
この記事では、マイホームを購入する際に押さえておきたいハウスメーカー選びの基準と失敗しないポイント、迷ってしまった場合の決め方を解説します。
1.家を建てる際にはハウスメーカー選びが大切
通常、マイホームの購入は一生に一度のことです。そのため、ハウスメーカー選びは慎重に行う必要があります。ハウスメーカーと聞くと「家を建てて売る会社」というイメージを持つ人が多いかもしれませんが、ハウスメーカーとの関係は「マイホームを買って終わり」「建てて終わり」ではありません。
家を建てた後にも、建物のメンテナンスやトラブルの対応といった、アフターサポート期間を設けているハウスメーカーがほとんどです。サポート期間はハウスメーカーによって異なるものの、基本的には長期にわたって付き合いが続くため、良好な関係性を維持できる会社選びが大切です。
なお、ハウスメーカーと同じく住宅を建築する会社に「工務店」があります。よく混同されますが、ハウスメーカーと工務店は多くの面で異なる業者です。2つの違いが気になる人は、下記のページを参考にしてください。
内部リンク:「工務店選び」
1-1.ハウスメーカー選びの前に決めておきたいこと
ハウスメーカーによって、主に取り扱う価格帯や得意とする工法などが異なります。自分たち家族が譲れない事柄を決めておくことで、相性のよいハウスメーカーを選びやすくなるでしょう。下記は、事前に決めておきたい事柄の例です。
予算 |
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工法 |
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暮らしのイメージ |
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家を建てるエリア |
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カタログやインターネットの情報などを参考にしながら家族全員で話し合い、理想とする家のイメージを固めておくことが大切です。
2.ハウスメーカー選びの基準5つ
日本には、全国に数多くのハウスメーカーが存在しています。どこのハウスメーカーも魅力的な家づくりを提案しているため、その中からどれを選べばよいのか分からない人も多いでしょう。自分と相性のよいハウスメーカーを選ぶためには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。ここでは、ハウスメーカー選びの一般的な基準を5つ紹介します。
2-1.工法
主な一戸建て住宅の工法には、「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」の3つがあります。それぞれにメリット・デメリットがあるほか、ハウスメーカーによって得手不得手があったり取り扱っていなかったりするため、注意が必要です。ハウスメーカーが対応できる各工法の簡単な概要と特徴は、下記の通りとなります。
【木造】
住宅に広く採用されており、日本の気候風土と相性のよい工法です。
在来工法 | 部材を1つずつ組み上げる、日本の伝統的な建築工法です。 |
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2×4工法 | 天井・壁・床を、枠組みと面材を接合した6つの板で構成します。 |
木質系プレハブ工法 | 構造自体は2×4工法と同じです。部材は工場で大量生産します。 |
【鉄骨造】
鉄骨を使用するため耐震性や防虫効果が高く、品質が安定する傾向にあります。
鉄骨系プレハブ工法 | 工場で生産した部材を現場で組み立てます。軽量鉄骨が主流です。 |
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重量鉄骨造 | 重量鉄骨を使用することで、建物の強度と間取りの自由度が上がります。 |
【鉄筋コンクリート造】
鉄筋とコンクリートを使用するため強度が高く、防火・防音性にも優れた工法です。
ラーメン構造 | 柱と梁で部屋の枠組みを作成するため自由度が高い反面、室内の凹凸が目立ちやすくなります。 |
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壁式構造 | 壁全体を鉄筋とコンクリートで構成する、非常に強度が高い工法です。将来的なリフォームの自由度は下がります。 |
2-2.デザイン
和風建築や洋風建築など、住宅のデザインにもハウスメーカーの得手不得手があります。また、和風建築と一口に言っても、「伝統的な日本家屋」にするか「和モダンスタイル」を取り入れるかによっても選ぶべきハウスメーカーは異なるでしょう。どのハウスメーカーがどのようなデザインを得意とするかは、住宅展示場のモデルハウスやカタログなどから推察することができます。
ただ、ハウスメーカーでは住宅の品質を保つため、使用できる部材や設備を規格化するケースがめずらしくありません。住宅のデザインにこだわりがあり、アレンジ力や柔軟性を求める場合は、比較的自由度が高めの工務店も検討するとよいでしょう。
2-3.価格
どの価格帯の住宅建築を得意とするかも、ハウスメーカー選びの基準です。ハウスメーカーは、ローコストハウスメーカーと大手ハウスメーカーに大きく分けられます。それぞれの概要・選択基準は下記の通りです。
【ローコストハウスメーカー】
ローコストハウスメーカーは、住宅の部材を規格化して自社工場で大量生産することで、販売価格を抑えているメーカーです。中には1,000万円以下の格安メーカーもあります。
価格相場 | 1,000万~3,000万円 |
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選択基準 |
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【大手ハウスメーカー】
大手ハウスメーカーは、規格化されていない部材にも対応できる傾向にあります。また、設備なども最新・高性能なものを取りそろえているため、平均価格は高くなります。
価格相場 | 2,000万円~ |
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選択基準 |
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なお、同じような設計にしてもハウスメーカーによって価格は変化するため、必ず複数社から見積もりを取ることが重要です。
2-4.サービス・サポート体制
サービス・サポートの体制や、対応する期間はハウスメーカーごとに大きく異なります。建物に不具合が見つかった場合の保証期間や定期点検の頻度、トラブル発生時の相談窓口の有無は、必ず確認しておきましょう。
なお、住宅の基礎や柱といった構造部分に対しては、どの施工会社でも最低10年間の保証が受けられます。これは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の定めによる保証のため、どのハウスメーカーでもこれより短くなることはありません。定期点検を一括依頼することで、長期保証制度が適用されるハウスメーカーもあります。
2-5.担当者の人柄・対応力
担当者の人柄や対応力も、チェックすべき項目です。ハウスメーカーのイメージや商品自体に魅力を感じても、担当者との連携がうまくいかなければスムーズにことが進みません。
担当者の人柄や対応力は、ハウスメーカー全体の質や信頼性と大きく逸脱することはないため、妥協しないことが大切です。ただし、担当者の力量に問題がない場合でも、単に自分自身との相性が合わない場合もあります。
3.失敗しないハウスメーカーの選び方のポイント6つ
ハウスメーカー選びの基準に沿って依頼先を決めることで、満足できるマイホームを建てられます。しかし、基準通りに選んだつもりでも、実際に家を建て始めると想定外の事態に遭遇するケースはめずらしくありません。ここでは、マイホームの建築で失敗しないハウスメーカー選びのポイントを、失敗・トラブルの事例を交えながら解説します。
3-1.担当者のトークだけで決めない
担当者の人柄や対応力は、ハウスメーカー選びにおける基準の1つです。しかし、担当者の印象がよいことだけを基準に依頼先を選んでしまうと、失敗してしまう可能性があります。
【担当者のトークだけで決めてしまった場合の失敗事例】
- ●担当者が依頼終了前に退職してしまった
- ●営業担当者とサポート役の担当者が別人だった
- ●契約締結後に担当者の態度が悪くなってしまった
退職や転勤、会社の方針などで、担当者が途中で変更になる可能性はゼロではありません。また、一部ではあるものの「契約さえ取れればこっちのもの」と考える営業マンもいます。担当者のトーク力に流されず、十分な力量があるか・信頼できる人間かを見極めることが大切です。なお、ハウスメーカー自体は気に入っていても担当者が信頼できない場合、上司へかけ合って人を変えてもらうこともできます。
3-2.モデルハウスだけで決めない
ハウスメーカーを選ぶ際、住宅展示場などでモデルハウスを見学してから決める人は多いでしょう。ここで問題となるのが、ほとんどのモデルハウスは「そのハウスメーカーが推奨する性能や設備を、惜しみなく使用した場合にできる最高ランクの家」であることです。性能や設備を最も魅力的に見せられる設計が優先されるため、広めの土地を確保しています。そのため、モデルハウスの印象だけを頼りに自分の家を建ててしまうと、下記のような不満を抱く恐れがあります。
【モデルハウスの印象だけで決めてしまった場合の失敗事例】
- ●広いリビングや玄関に魅力を感じていたが、他の部屋に使えるスペースが少なくなってしまった
- ●備えつけの本棚が格好よく見えたが、狭い部屋に作ったら立派さよりも圧迫感のほうが勝ってしまった
魅力的なモデルハウスを見つけた場合は、同じハウスメーカーで建てた家の完成見学会などに参加するとよいでしょう。自分が用意できる土地の広さと同程度の建物を見ることで、現実に沿った完成形の家をイメージすることができます。
3-3.値引き額だけで決めない
ハウスメーカー選びでは、複数の会社へ相見積もりを依頼することが一般的です。競合他社と比較することで、契約を欲するハウスメーカー同士が値引きで対抗することもあります。一見得をしたように思えますが、値引き額が大きい場合は下記の失敗事例に注意が必要です。
【値引き額だけで決めてしまった場合の失敗事例】
- ●建材や設備・性能のグレードが下がってしまった
- ●オプションなどの追加費用が高くついてしまった
- ●初めから値引き前提の見積もり額だったため、額面ほど値引きされてなかった
広告宣伝費などの上乗せがなく最低限の利益しか計上されていない場合、大幅な値引きには対応できません。そのため、建材などの原価を下げることで調整したり、後出しの条件で補填しようとしたりするケースがあります。百万円単位の値引きには注意したほうがよいでしょう。
3-4.着工前のイメージだけで決めない
設計図やイメージイラストなどから想像した家の完成形が完璧に思えても、実際に建築が始まると「なんとなく思っていた家と違う」と違和感を感じる人は少なくありません。特に注文住宅の場合、曖昧なイメージだけで決めてしまうと後から後悔することがあります。
【着工前のイメージだけで決めてしまった場合の失敗事例】
- ●思っていたよりも窓から日が入らなかった
- ●コンセントの位置が使いにくかった
- ●間取りの設計が実際の生活様式とズレていた
- ●建築プランを変更したら追加費用がかさんだ・工期が伸びた
着工後に「こうすればよかった」と感じた場合、工事内容の変更を申し出ることもあるでしょう。しかし、着工後にどこまで変更に応じられるか、どのくらいの追加費用がかかるかは、ハウスメーカーによって異なります。中には、着工後の変更には一切応じてもらえない会社もあるため、どの程度変更可能なのか確認することが大切です。
3-5.ハウスメーカーの知名度だけで決めない
知名度の高いハウスメーカーは、なんとなく安心感があります。しかし、有名ハウスメーカーだからといって、自分が建てたい家との相性がよいとは限りません。
【ハウスメーカーの知名度だけで決めてしまった場合の失敗事例】
- ●採用できるデザインや設備に制限があった
- ●納得できるレベルのこだわりが実現できなかった
- ●想定以上に費用がかかった
一般的な傾向ではあるものの、設計の自由度や価格の安さを優先する場合は、工務店やローコストハウスメーカーのほうが向いています。一方、サービス・サポートの手厚さや、最新の設備導入を優先したい場合は、大手ハウスメーカーのほうが向いているでしょう。ハウスメーカーを選ぶ際は、知名度ではなく「いかに自分の希望条件に沿ってくれるか」を念頭に比較することが大切です。
3-6.知り合いの紹介だけで決めない
ハウスメーカー選びにおいて、知り合いの体験談は非常に有用な情報となります。しかし、あくまでもその知り合いだからこそうまくいったのであって、自分にも同じ基準が当てはまるとは限りません。
【知り合いの紹介だけで決めてしまった場合の失敗事例】
- ●理想とする家の方向性が違ったため、こだわりが実現しなかった
- ●知り合いとの関係性を優先して、納得しないまま契約してしまった
- ●知り合いの紹介だからと遠慮してしまい、言いたいことが言えなかった
通常は自分とハウスメーカーだけの問題であることにも、「知り合いとの関係性」が加わることで交渉を躊躇してしまうケースがあります。理想的な家を建てるためには、妥協せずに要求を伝えられる会社を選ぶことも必要です。
4.ハウスメーカー選びで迷ってしまった場合の決め手2つ
ハウスメーカー選びでは、さまざまなポイントを考慮する必要があります。しかし、考える点が多いため、なかなか決めきれずに困ってしまう人は少なくありません。また、ハウスメーカーの数は非常に多いため、すべてのポイントで比較しても複数メーカーで同じような評価になることがあります。ここでは、ハウスメーカー選びで迷ってしまい「どうしても決められない」場合の決め手を2つ紹介します。
4-1.担当者の人間性
基本的に、担当者の人柄や能力だけを頼りに、依頼するハウスメーカーを決めるべきではありません。しかし、同程度の評価となるハウスメーカーが多く、選択肢に迷ってしまった場合は、担当者との相性や人間性を決め手にすることができます。担当者を見極める際には、下記の点に注目するとよいでしょう。
【よい担当者を見極めるポイント】
- ●話しやすい雰囲気がある
- ●要望や悩みを十分に聞いてくれる
- ●分かりやすい言葉で説明してくれる
- ●希望した設計のデメリットも教えてくれる
- ●代替案を提示してくれる
- ●メーカーにとって不都合なことや他社に有利なことも教えてくれる
- ●こちらが納得するまで契約を迫らない
【悪い担当者を見極めるポイント】
- ●自社の自慢話ばかりする
- ●他社の悪口を言う
- ●知識にない事柄を調べないまま適当なことを言う
- ●質問に対して専門用語を多用し、ごまかそうとする
- ●高額なプランばかりを紹介する
- ●こちらの要望を書きとめない
- ●契約を急かす
4-2.会社の財務状況
会社の財務状況も、ハウスメーカー選びでは重要なチェック項目です。財務状況の悪い会社は着工後に倒産する恐れがあり、最悪の場合は下記の状況となることが考えられます。
- ●支払い済みの費用が返金されない
- ●家が完成しないまま放置される
- ●工事再開までに時間と手間がかかる
また、建物の完成後に会社が倒産した場合、各種保証やアフターサポートも受けられなくなります。加入済みの保険から支払われる分はあるものの、満額もらえるとは限りません。赤字や負債があるからといって必ず倒産するわけではありませんが、多少のリスクがあることは覚えておいたほうがよいでしょう。
財務状況が非常に悪化している会社には、下記の特徴が表れる傾向にあります。
- ●SNSで口コミを検索すると、下請けから未払いなどのクレームが見つかる
- ●建築棟数が少ないのに大幅な値引きを提案する
- ●契約や支払いを急がせる
多少なりとも不安を感じる場合は、仮契約を交わす前に決算書を確認させてもらいましょう。
まとめ
ハウスメーカーを選ぶ際は、工法やデザイン、価格などを隅々まで比較し、自分が理想とする住まいづくりが可能か熟考することが大切です。曖昧なイメージで決めたり担当者の押しに負けたりして決めると、後悔することになりかねません。
多角的に比較検討する中でハウスメーカー選びに疲れたときには、担当者の人間性や会社の財務状況を指標にしてもよいでしょう。特に家へのこだわりが強い場合は、知名度がそれほど高くないローコストハウスメーカーや、地域環境・気候風土に精通した工務店などを選ぶのも1つの方法です。