注文住宅を検討する中で、建築費用がいくらかかるかを知りたい人は多いでしょう。注文住宅の建築費用は、建物の規模や依頼するハウスメーカーによって異なります。
ハウスメーカーの建築費用を比較するときに役立つ指標が「坪単価」です。坪単価を把握することで、実際の建築費用が安いか高いかを予測できます。
当記事では坪単価とは何かから、ハウスメーカー15社における坪単価の比較と各社の特徴、注文住宅の坪単価を抑える方法までを徹底解説します。
1.そもそも坪単価とは?
坪単価とは、住宅を建てるときに1坪あたりいくらの費用がかかるかを示す基準です。坪単価は下記の計算式で算出されます。
・坪単価の計算式
本体工事費(円)÷延べ床面積(坪)=坪単価(円)
住宅の延べ床面積は一般的に「坪」を単位として表記され、1坪は約3.3m2です。住宅本体を建てるための本体工事費を、住宅の延べ床面積で割った金額が、坪単価となります。
例として、住宅の本体工事費が3000万円、延べ床面積が50坪のケースを見てみましょう。坪単価の計算式に当てはめると、坪単価は60万円となります。
(例)
本体工事費(3000万円)÷延べ床面積(50坪)=坪単価(60万円)
坪単価を見ることで、依頼したときの建築費用を予測したり、複数の業者間で建築コストを比較したりすることができます。
坪単価の相場は、大手ハウスメーカーで約70万~90万円です。建築コストを抑えたハウスメーカーは約30万~50万円、工務店は約50万~60万円が坪単価の相場となります。
1-1.坪単価に関する注意点
坪単価を建築費用の予測や比較に役立てるためには、いくつかの注意点を押さえることが大切です。
以下では、坪単価に関する注意点を紹介します。
・業者によって基準が異なる
坪単価の計算に用いる本体工事費は明確な定義が存在せず、業者によって基準が異なる点に注意してください。本体工事費の中に照明器具や給排水設備工事などの費用を含めないケースもあります。
・延べ床面積と施工床面積の違い
業者によっては、延べ床面積ではなく施工床面積を用いて坪単価を計算するケースもあります。
延べ床面積とは、建物本体の床面積を合計した数字です。対して施工床面積とは、玄関ポーチやバルコニーなどの付帯工事部分も含めた、建築工事を行う場所すべての床面積を合計した数字です。
施工床面積で計算した坪単価は、価格を安く見せられます。しかし、延べ床面積で計算し直すと、価格が高くなるケースもあるため注意が必要です。
・建物本体以外にも費用がかかる
住宅を建てるためには、建物本体以外にも費用がかかる点を理解しましょう。建築前に行う地盤調査・地盤改良工事費や、外構工事費・仮設工事費、登記費用や不動産取得税などの申請費用も発生します。住宅を建てるときの費用は、各種費用も含めて考えることが大切です。
費用相場を調べる際は、坪単価だけに注目せず、ハウスメーカーが採用する計算方法や建物本体以外にかかる費用にも注目しましょう。
2.ハウスメーカー15社の坪単価を比較!各社の特徴も
代表的なハウスメーカー15社の坪単価を、一覧表で紹介します。
ハウスメーカー | 平均的な坪単価 |
---|---|
アイダ設計 | 約32~65万円 |
アキュラホーム | 約45~65万円 |
一条工務店 | 約50~90万円 |
住友不動産 | 約50~92万円 |
積水ハウス | 約73~89万円 |
セキスイハイム | 約74~82万円 |
タマホーム | 約34~75万円 |
トヨタホーム | 約55~92万円 |
パナソニックホームズ | 約60~130万円 |
ヘーベルハウス | 約65~104万円 |
ミサワホーム | 約67~74万円 |
三井ホーム | 約81~96万円 |
三菱地所ホーム | 約80~120万円 |
ユニバーサルホーム | 約47~70万円 |
ロイヤルハウス | 約30~55万円 |
ハウスメーカーによって坪単価に大きな価格差がある理由は、ハウスメーカー各社で得意とする住宅構造や工法、コストダウンの工夫に違いがあるためです。建築に使用する材料費や人件費の違いは、住宅の坪単価に大きな影響を与えます。
以下では、表に挙げたハウスメーカー15社について、坪単価にかかわる各社の採用構造や住宅の概要・品質・コストなどを紹介します。
2-1.アイダ設計
アイダ設計が採用する住宅構造は木造軸組工法です。仕入れから施工までの自社一貫体制と、コストダウンのノウハウを生かすことにより、手間のかかる木造軸組工法でありながら低価格での住宅施工を実現しています。
アイダ設計の代表的な注文住宅は「ブラーボ」です。アイダ設計では第三者機関による施工品質のチェックを取り入れていることが特徴です。低価格なだけではなく、厳しいチェック体制による高品質な住宅を提供しています。
2-2.アキュラホーム
アキュラホームが採用する住宅構造は木造軸組工法です。木造軸組工法は、骨組みとして木の柱と梁を組み合わせる伝統的な工法で、日本で最も多く採用されています。
アキュラホームは「アキュラシステム」と呼ばれる建設合理化システムを作り上げ、施工コストのダウンにつなげています。部材の共同仕入れや直接施工も実施し、無駄を省いた適正価格で住宅を建てられるハウスメーカーです。
また、アキュラホームの住宅は、住宅性能表示制度の耐震等級など7項目において最高等級を達成しています。高品質な住宅を適正価格で建てられる点が、アキュラホームの強みです。
公式サイト:https://www.aqura.co.jp/
2-3.一条工務店
一条工務店が採用する住宅構造は木造軸組工法や2×6(ツーバイフォー)工法です。2×6工法や2×4工法やは北米から伝わった建築方法で、パネル状に組み立てた「面」で建物を支えることが特徴です。
一条工務店は住宅性能にこだわりがあり、耐震性・耐久性・省エネ性などにおいて高水準な住宅を建てられます。自社工場での住宅部材の内製化により、建築コストを下げている点も特徴です。
一条工務店では風格がある「プレミアムスタイル」や機能追及の「スマートスタイル」など、さまざまな住宅スタイルが用意されています。自分好みのスタイルで家づくりができるハウスメーカーです。
2-4.住友不動産
住友不動産が採用する住宅構造は、木造のハイブリッド工法や2×4・2×6工法です。住友不動産は、不動産デベロッパーとして蓄積したデザイン力や都市型住宅のノウハウに強みを持っています。独自の耐震・制震技術を持ち、地震に強い家づくりができる点が特徴です。
住友不動産の代表的な住宅としては「J・アーバンスタイル」が挙げられます。広い間取りや大きな窓で開放感を高めるなど、個性的な住宅を建てられるハウスメーカーです。
公式サイト:https://www.j-urban.jp/
2-5.積水ハウス
積水ハウスが採用する住宅構造は、木造軸組工法と鉄骨構造です。特に鉄骨構造による間取りの高い自由度や、3階・4階にも対応できる施工技術に強みを持っています。独自の断熱技術も持っていて、鉄骨構造でも一年中快適に過ごせる点が特徴です。
また、積水ハウスの木造住宅である「シャーウッド」は、シャーウッド構法と呼ばれる強度が高い構法で施工が行われます。住宅構造の選択肢が多く、理想に近い住宅を建てられるハウスメーカーです。
2-6.セキスイハイム
セキスイハイムが採用する住宅構造は、木造の2×4・2×6工法と鉄骨構造です。セキスイハイムは、工場で作った住宅の骨組みを現地で組み立てるユニット工法を行っています。品質の均一化や職人の作業低減により、コストダウンを可能としました。
セキスイハイムの住宅は大きく分けて「ベーシック」「スマート&レジリエンス」「ライフスタイル」の3シリーズです。各シリーズにはさらに細かい住宅商品があり、施主の希望に合うスタイルで家づくりができます。
2-7.タマホーム
タマホームが採用する住宅構造は木造軸組工法です。タマホームは木材の流通システムとして「タマストラクチャー」を構築し、適正価格での木材仕入れを行っています。住宅設備の大量発注や施工の直接管理も行い、施工コストを抑えることに成功しました。
タマホームでは土台・柱・床合板といった構造躯体に70%超の国産材を使用しています。低価格でありながら、品質の高い住宅を建てられる点がタマホームの特徴です。
公式サイト:https://www.tamahome.jp/
2-8.トヨタホーム
トヨタホームが採用する住宅構造は木造軸組工法と2×4工法、鉄骨構造です。特に鉄骨構造の住宅商品が多数存在し、広い間取り・開口部で設計した住宅に強みを持っています。鉄骨住宅に欠かせない高い断熱性能や、高耐久外壁・防錆技術といった耐久性能を高める技術がある点も特徴です。
トヨタホームでは「60年長期保証」サービスを提供しています。住宅の品質や耐久性に自信を持っているハウスメーカーです。
2-9.パナソニックホームズ
パナソニックホームズが採用する住宅構造は鉄骨構造です。マンションなどに用いられている鉄骨軸組構造や重量鉄骨ラーメン構造を新たに住宅用として開発し、強度の高い住宅を建てられる点に強みがあります。
パナソニックホームズでは基礎・外壁・屋根材に耐用年数が長い部材を使用しています。他ハウスメーカーと比較すると平均的な坪単価こそ高いものの、資産価値を長く保ちやすい住宅を建てられる点が魅力です。
2-10.ヘーベルハウス
ヘーベルハウスが採用する住宅構造は鉄骨構造です。ヘーベルハウスは鉄骨の中でも重量鉄骨をメインとした家づくりを行っており、耐久性の高さに強みがあります。独自の住環境シミュレーションシステム「ARIOS」により、光や風を生かしたプランニングができる点も特徴です。
ヘーベルハウスは住宅の60年点検システムを提供しています。住宅引き渡し後も長期にわたってアフターフォローを受けられるハウスメーカーです。
2-11.ミサワホーム
ミサワホームが採用する住宅構造は木質パネル接着工法や木造軸組工法です。木質パネル接着工法は、強度の高い木質パネル同士を面接合することで、箱形状による高い住宅強度を実現しています。耐震性・耐火性・断熱性に優れている点も特徴です。
また、ミサワホームは施工住宅ごとに部材や部品を工場生産し、現場で組み立てる「完全邸別生産方式」を実現しています。高精度な部材が使用されることで、品質の高い家づくりをできる点がミサワホームの強みです。
2-12.三井ホーム
三井ホームが採用する住宅構造は木造の2×4・2×6工法です。三井ホームは基本的に、2×4工法に独自開発のパネルなどを用いた「プレミアム・モノコック構法」により住宅施工を行っています。高水準の耐震性・断熱性・耐久性を備えた家づくりができる点が特徴です。
三井ホームは施工開始から住宅の引き渡しまでに、検査者立ち会いでの検査を6回にわたり実施します。厳格な品質管理により、高品質の住宅が完成する点も魅力です。
2-13.三菱地所ホーム
三菱地所ホームが採用する住宅構造は木造の2×4工法です。三菱地所ホームでは「2xNEXT構法」と呼んでおり、自社開発の「ハイプロテクトウォール」を使用した高い耐久性が特徴となっています。間取り自由度の高さと、耐震等級3の住宅性能を兼ね備えている点が強みです。
また、三菱地所ホームは「長期50年保証」サービスを提供しています。住宅の構造耐力性能と防水性能に自信を持っているハウスメーカーです。
2-14.ユニバーサルホーム
ユニバーサルホームが採用する住宅構造は木造軸組工法です。ユニバーサルホームは全国にフランチャイズ展開しているハウスメーカーであり、本部での部材一括仕入れと現地調達を使い分けています。さらに乾式工法による工期短縮や直接施工により、施工コストを抑えることに成功しました。
ユニバーサルホームは地熱床暖房を採用したエコな住宅を提供する点も特徴です。地熱床システムは耐震性能を備え、地震に強い家づくりができます。
2-15.ロイヤルハウス
ロイヤルハウスが採用する住宅構造は木造軸組工法です。ロイヤルハウスはフランチャイズでの共同仕入れシステムを構築し、部材の一括仕入れを行っています。加盟店による直接施工や設計システムの標準化なども実施し、コストダウンを実現しました。
ロイヤルハウスは、木造軸組工法をベースに、金物で木の芯同士を接合して引き寄せる「ロイヤルSSS構法」で施工を行う点が特徴です。木造建築の美しさを出しながらも、耐久性の高い家づくりができる点に強みがあります。
3.ハウスメーカーで家を建てる際に坪単価を抑えるには?
ハウスメーカーごとの平均的な坪単価は、あくまでも坪単価の目安となる額です。実際に家を建てる際の坪単価は、選択する施工プランや建物の規模・設備などによって変動します。
以下では、坪単価を抑えるために実践すべきポイントを紹介します。
3-1.複数のハウスメーカーで見積もりを取る
1社だけを選んで見積もりを取るよりも、複数のハウスメーカーで見積もりを取ったほうが、坪単価の安い施工会社を見つけやすくなります。ハウスメーカーに見積もりを依頼するときには、坪単価を記載してもらうことをお願いしましょう。
また、複数のハウスメーカーで坪単価を比較するためには、価格や住宅の規模といった条件を指定して見積もりを取る方法がおすすめです。条件を揃えて見積もりを取ることで、ハウスメーカーごとの坪単価の違いを比較しやすくなります。
3-2.外観・構造をシンプルにする
坪単価を安くするためには、外観・構造をシンプルにすることを心がけましょう。住宅の外観を凝ったデザインにすると、構造材の加工に手間がかかりコストが増えてしまいます。外観は凹凸が少ない箱型に近づけると、余分なコストを削減できます。
坪単価は延べ床面積に比例するため、無駄な間取りや部屋を減らして床面積を小さく抑えることも大切です。部屋数を減らすと壁の数も減り、コストを削減できます。
ただし、間取りの中には家族でくつろぐリビングやダイニングなど、スペースを広く取ったほうがよい空間もあるため、優先順位を決めて家づくりをしましょう。
3-3.水回りを集約する
キッチン・浴室・ランドリー・トイレといった水回りには、壁裏に水道用配管を通す必要があります。水回りをバラバラに配置すると水道の配管が複雑になり、コストアップにつながるため注意してください。坪単価を抑えるためには、水回りを集約できる間取りにしましょう。
たとえば浴室とランドリーを隣り合わせに配置すると、水回りを集約できて、洗濯用の動線もまとめられます。坪単価を抑えると同時に、暮らしやすさも考えて水回りの間取りを決めましょう。
3-4.設備や仕様にかける予算のバランスを考える
坪単価がなかなか抑えられないときは、設備や仕様にかける予算のバランスを考えましょう。
キッチン設備・照明・テラスなどは、高い設備グレードを選択すると多額の費用がかかります。収納棚やウォークインクローゼットなどの収納も、多く付けすぎることは坪単価を押し上げる要因です。
たとえば、「アイランドキッチンではなく壁付けキッチンにする」「収納棚を減らして屋根裏を収納に活用できるようにする」なども考えてみましょう。設備や仕様を工夫することで、坪単価を抑えやすくなります。
まとめ
坪単価とは、1坪あたりの建築費用がいくらかかるかを示す基準です。坪単価はハウスメーカーごとに異なり、価格帯の安い業者は仕入れや人件費のコストダウンを努力しています。複数のハウスメーカーで見積もりを取り、予算に見合う坪単価のハウスメーカー選びをしましょう。
この記事を参考に、ぜひご家族に合った素敵な家づくりを進めてくださいね。