住宅ローンの知識

今後の住宅ローン金利はどうなる?金利上昇に向けた対策とは

今後の住宅ローン金利はどうなる?金利上昇に向けた対策とは

住宅ローン金利を変動金利・固定金利のどちらにするかは、住宅購入時に多くの人が悩むテーマです。住宅ローンの返済期間は長期にわたるため、金利タイプを選ぶときは現在の金利水準だけではなく、今後の動向も考える必要があります。住宅ローン金利で損をしたくない人は、今後の住宅ローン金利はどうなるかを予想した上で、適した金利タイプを選びましょう。

当記事では住宅ローン金利の仕組みから、2022年以降の金利はどうなるか、金利上昇に向けた対策までを解説します。

1.【金利動向の基礎知識】住宅ローン金利の仕組み

住宅ローン金利の動向を知るためには、まず住宅ローン金利の仕組みを理解することが大切です。住宅ローン金利の仕組みが分かれば、金利上昇・下落による住宅ローンの返済額への影響も見通せます。以下では、金利の意味と金利が決まる要因について紹介します。

1-1.金利の意味と変動金利・固定金利の違い

そもそも金利とは、借りたお金を返済するときに、元金にプラスして支払う利息の割合です。金利は一般的に1年間の利息の割合を示す「年利」で表示されます。たとえば、年利1%で1,000万円を借りて、1年後に1,000万円を一括返済する場合、発生する利息額は10万円です。

住宅ローンの金利タイプは、変動金利・固定金利の2種類に分けられます。変動金利とは、借入開始から一定期間ごとに金利の見直しが行われ、金利が変動するタイプの住宅ローン金利です。変動金利の金利は、一般的に固定金利よりも低く設定されています。その一方で、固定金利とは借入開始時の借入金利で固定されるタイプの住宅ローン金利です。固定金利は完済までの返済総額を計算しやすく、返済計画を立てやすいというメリットがあります。

1-2.金融機関で金利が決まる要因

住宅ローンを提供する金融機関は、金利タイプごとに異なる指標に連動する、基準金利(店頭金利)を決めています。

一般的に、変動金利は短期金利の指標である「短期プライムレート」に連動して基準金利が決まります。短期プライムレートとは、銀行が最優良企業へ融資する場合に適用する優遇金利のことです。短期プライムレートは日銀(日本銀行)が定める政策金利の影響を受けるため、日銀が金融政策の変更などを行うと、変動金利の基準金利も影響を受けます。

一方で、固定金利は「日本国債10年利回り」に代表される長期金利の指標に連動して基準金利が決まります。「日本国債10年利回り」とは、償還年限が10年に設定された日本国債における利益割合のことです。国債利回りは、将来を予測して国債取引を行う投資家たちの動きによって決まり、固定金利も投資家たちの動きに影響を受けます。

なお、金融機関の決めた基準金利がそのまま住宅ローンの適用金利となるわけではありません。 基準金利に対して、条件を満たした場合に利用できる引下げ金利を適用した金利が、適用金利となります。

2.2022年以降の住宅ローン金利は今後どうなる?

2022年以降の住宅ローン金利は、変動金利はしばらく低金利のまま推移することが予測されています。一方で、固定金利は上昇する可能性がある点に留意しましょう。2022年以降の変動金利と固定金利について、それぞれの動向予測を理由とともに解説します。

2-1.変動金利の場合

固定金利が上昇しても、変動金利は現状のままで推移する可能性が高いと予測されています。変動金利が低金利を保つ可能性が高い理由は、下記の2点です。

・消費者物価指数が日銀の目標とする2%になっていない

日銀は物価安定の目標として、消費者物価指数の前年比上昇比率2%を定めています。しかしながら、近年における消費者物価指数の前年比はほぼ横ばいであり、日銀の目標とする2%に達していません。

出典:総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2021年(令和3年)12月分及び2021年(令和3年)平均」

日銀は消費者物価指数を上昇させるための金融政策として、2016年からマイナス金利を適用しています。2022年3月18日にもマイナス金利政策の維持を発表しました。

出典:日本銀行「当面の金融政策運営について」

日銀のマイナス金利は短期金利の金利低下につながり、連動する変動金利も低金利のままになると予測されます。

・金融機関で顧客の争奪戦が続いている

都市銀行・地方銀行やネット銀行も含めて、金融機関では顧客の争奪戦が続いているのが現状です。重要な個人向け商品である住宅ローンにおいても、金融機関は各社独自の引下げ金利を適用して、新規顧客の獲得や他社顧客のローン借り換えを図っています。

変動金利が低金利となっているのは、金融機関が住宅ローン金利の引下げ金利を拡大し続けたことも大きな要因です。短期金利が上昇しても、金融機関は現在の住宅ローン金利の引下げ幅を維持する可能性が高く、変動金利も低金利になると予測されます。

2-2.固定金利の場合

低金利での推移が予測されている変動金利に対し、固定金利の上昇が予測されている理由は、下記の2点です。

・長期金利が上昇している

固定金利が連動している長期金利は上昇傾向を見せています。日本国債10年利回りは2022年4月15日引値で0.240%であり、直近5年間において高水準の利回りです。日銀の政策では、長期金利の変動許容幅は0%〜プラスマイナス0.25%の範囲としています。

今後の長期金利は日銀が許容する上限値の0.25%付近で推移する可能性があり、長期金利と連動する固定金利も上昇が予測されます。

・アメリカでインフレや長期金利の上昇が起こっている

長期金利の上昇には、アメリカでインフレが起こっていることが背景にあります。アメリカはコロナ禍からの復興が加速しており、物価上昇のインフレとなっている状況です。さらに世界情勢への不安により、安全資産とされるアメリカ国債の人気が高まりました。アメリカ国債の人気はアメリカの長期金利上昇を引き起こしています。

アメリカ経済は世界経済における大きな指標であり、日本経済にも大きな影響を及ぼす要素です。アメリカでのインフレと長期金利上昇が続くことで、日本国内の長期金利も上昇し、連動する固定金利も上昇する可能性が高くなります。

3.今後の住宅ローン金利上昇に向けた対策3選

最後に、今後の住宅ローン金利の上昇が見込まれる場面ではどのように対策すればよいのかを、3つのシチュエーション別に紹介します。

【これから住宅ローンを借りる場合】

これから住宅ローンを借りる場合は、固定金利を選択肢に入れることがおすすめです。現状の住宅ローン金利を比較して、固定金利よりも低金利である変動金利を選ぶ人は多い傾向にあります。しかし、変動金利の低金利は10年先・20年先にも続くとは限りません。

日銀が金融政策を転換してマイナス金利を解除した場合、変動金利にも金利上昇リスクが想定されます。後に金利上昇の可能性が控えている局面では、 固定金利に比べてもともとの基準金利が安い変動金利のほうが、金利上昇による影響を大きく受けやすい点に留意しましょう。

【変動金利で住宅ローンを借りる場合】

変動金利で住宅ローンを借りた後で金利が上昇しそうな場合は、繰り上げ返済を検討しましょう。繰り上げ返済とは、元金の一部もしくは全額を前倒しで返済する方法です。繰り上げ返済で元金を減らすことで、繰り上げ返済以降に支払う利息分の額を抑えられます。

繰り上げ返済は、 大きな出費が控えていないタイミングで行うことがおすすめです。繰り上げ返済は大きな出費となるため、子どもの入学や家族の介護など、重要なライフイベントがないタイミングを選びましょう。

【住宅ローンを借りて数十年以上経つ場合】

住宅ローンを借りて数十年以上経った後で金利上昇局面を迎えた場合は、住宅ローンの借り換えを検討しましょう。住宅ローンの借り換えとは、新しく住宅ローンを借りて、返済中である以前の住宅ローンを一括返済する方法です。金利の高いローンから金利の低いローンへと借り換えることで、総返済額を減らせる可能性があります。

ただし、住宅ローンの借り換えには手数料などの諸費用が発生し、新しく借りる住宅ローンの審査に通る必要もあります。また、借り換えによって、どのようなケースでも総返済額を減らせるわけではない点に注意してください。住宅ローンの借り換えで総返済額を減らすためには、 借り換えのシミュレーションを行い、総返済額の変化を調べることが大切です。

まとめ

住宅ローン金利には変動金利・固定金利の2種類があります。変動金利は短期金利に、固定金利は長期金利にそれぞれ連動して、基準金利が決まる仕組みです。現状では短期金利を低下させる要因が多く、2022年以降も変動金利はしばらく低金利が続くと予測されます。一方で長期金利は上昇しており、固定金利も上がると考えられています。

住宅ローンを利用して家を建てる際は、将来的な金利推移にも注目することが重要です。住宅ローン金利が上昇する局面での対策も参考にして、自分に合う金利タイプを選びましょう。