注文住宅の購入は人生における一大イベントの1つです。しかし、入念に打ち合わせを行い、納得した上で建ててもらったにもかかわらず、入居してから欠陥が発覚するケースは少なからずあります。万が一の事態にも買主が泣き寝入りしなくて済むよう、新築住宅の瑕疵に対しては法律で決められた保証を受けることが可能です。
当記事では、工務店に依頼した新築住宅に不備があった場合に受けられる、保証の期間や種類について解説します。理想を詰め込んだマイホームで長く快適に住み続けるためにも、ぜひ当記事を参考にして、新築住宅の保証システムを把握しておきましょう。
1. 工務店の保証期間は何年まで受けられる?
工務店による新築住宅の保証期間は、引渡し日から数えて最低でも10年間です。新築住宅の保証期間は、国土交通省の定めた「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に明記されている法定期間であり、どこの工務店が建てた住宅でも変わりません。
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」による保証制度は、住宅の「構造耐力上主要な部分」あるいは「雨水の浸入を防止する部分」に瑕疵が見つかった場合が対象です。「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」の具体例は、「2. 工務店が提供する保証の内容とは?」で解説しています。また、土壌が汚染されていることや過去に浸水被害があったことを知らせなかった場合などは、「土地」に対して瑕疵があると見なされるケースもあります。
また、2020年4月の民法改正によって、工務店には「契約不適合責任(前:瑕疵担保責任)」が課されるようになりました。契約不適合責任とは、新築住宅の構造的な欠陥だけでなく、設計図に描かれた仕様と実際の仕上がりが異なった場合に4つの請求権を認めた法令です。
出典:e-Gov「民法」
1-1. 契約不適合責任によって買主が請求できる権利
納品された建物が仕様書と異なり「契約不適合責任」があると判断されれば、買主は工務店に対して以下4種類の権利を請求できます。
追完請求 |
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追完請求とは、不完全な状態で引渡されたものを、修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しのいずれかの方法で完全な状態に修正するよう請求できる権利です。例えば、設計書とは異なる床材が使われていた場合、契約通りの床材に張り替えてもらうことができます。ただし、買主に責任がある場合には権利を主張できません。 |
代金減額請求 |
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工務店が履行の追完に対応しない・できない状態の場合、建築費用の減額を請求できます。履行の追完と同じく、買主に責任がある場合は権利を主張できません。 |
損害賠償請求 |
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契約不適合によって損害を被ったと認められれば、工務店に損害賠償請求が可能です。損害賠償は、追完請求・代金減額請求が認められた場合にも請求できます。 |
契約の解除 |
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工務店が買主の定めた期間内に履行の追完に対応しない・できない状態の場合、工事請負契約の解除が可能です。ただし、明らかに建築計画の遂行が不可能であると認められた場合に限ります。 |
出典:e-Gov「民法」
2. 工務店が提供する保証の内容とは?
工務店の保証内容には、基本構造に対する保証と内装に対する保証の2種類あります。
基本構造に対する保証は、住宅の「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」が対象であり、下記の部分が代表的です。
構造耐力上主要な部分 | 土台・基礎・柱・梁など |
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雨水の浸入を防止する部分 | 屋根・外壁など |
基本構造に瑕疵があると、耐震性能が基準よりも低くなったり排水機能に問題が生じたりします。上記の中でも建物の内部にある瑕疵は気付きにくく、壁のひびや雨漏りなどのトラブルから問題を把握するケースが一般的です。
内装への保証は、住宅設備機器や機材などが対象であり、下記が代表として挙げられます。
設備 | キッチン・ユニットバス・洗面台・トイレなど |
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機材 | サッシ・フローリング・クロスなど |
特別な要望がない限り、新築住宅では新品の設備や機材の設置が基本です。普通に使用していて短期間に不具合が頻発するのであれば、欠陥住宅の可能性が高いと言えるでしょう。
2-1. 10年を超えた後の保証期間や内容は工務店によって異なる
どこの工務店と契約した場合でも、住宅の引渡し後10年間は必ず保証が受けられます。しかし、10年を超えた後の保証期間や内容は、一律ではありません。
また保証には、基本構造への保証と内装への保証という分け方に加え、法律に基づいた保証と工務店や設備・機材のメーカーが独自に設ける保証サービスという分け方もあります。何がどこまで・いつまで保証に含まれるかは工務店や契約によっても異なるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
法的保証は、10年間の保証が切れた後、5年以内に延長保証を申し込めばさらに10年間の保証を受けられます。また、工務店によっては法定保証と別に、下記のような保証やアフターサービスを用意するところもあります。
- 5年・10年ごとに延長保証を申し込める
- 20年目・30年目などに定期巡回を実施する
- 定期的に有償メンテナンスを実施する
- 無料・有料の劣化診断を実施する
保証期間が長い=よい工務店というわけではありませんが、判断材料の1つとして各社を比較するとよいでしょう。
3. 工務店の保証期間や内容に関するよくあるQ&A
マイホームの購入は人生における大きな買い物の1つです。そう何度も経験することではないため、工務店の保証期間や内容に関して、疑問や不安を抱く人は少なくありません。納得して契約に踏み切るためにも、気になることはすべて解消してから進みましょう。
ここでは、工務店の保証期間や内容に関してよくあるQ&Aを3つ紹介します。
3-1. 保証期間内に会社が倒産したらどうなりますか?
保証期間内に工務店が倒産してしまった場合でも、保証は受けられます。
工務店は、万が一の事態に備えて瑕疵担保保険などに加入し、資金を確保しておかなければ買主に住宅を引渡せません。すべての工務店が必ず瑕疵担保保険への加入もしくは供託金の積み立てを行っており、倒産してしまっても保険の支払いから保証を受けることができます。
ただし、あくまでも法律で保証が定められた基本構造部分のみが対象で、工務店が独自に追加したサービスやサポートは保証されません。また、10年以上経過した場合は保証の対象外です。新築時に瑕疵があった場合でも、10年以上経過してから露見した場合は自己負担となります。保証期間中であれば無償で修理が可能となるため、リフォーム業者などを探し、不具合がないか確認してもらうことが重要です。
3-2. 確認するべきポイントはありますか?
業者による点検も重要ですが、自分自身でもある程度チェックしておくと早めに問題を発見できます。下記は、日頃から気を付けておきたいポイントです。
基礎部分 |
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外壁部分 |
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屋根部分 |
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ベランダ・屋上部分 |
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壁・天井部分 |
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床下部分 |
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床下部分 |
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本格的な点検を行う時期としては、引渡されてから3~6か月目・1~2年目・5年目・10年目辺りが目安となります。
3-3. 契約不適合責任を追求できる制限はありますか?
「契約不適合責任」を追及する場合、「不適合を知った時から1年以内」という条件が定められているため注意が必要です。住宅の不適合を発見してから1年以内に、契約を解除したり、訴訟を起こしたりしないと権利が消滅してしまうわけではありません。住宅に瑕疵が見付かってから1年以内に「不適合がある」と告げていれば権利を行使できます。
ただし、工務店側が不適合の存在を認識していながら黙秘していた場合や、数量に関する不適合の場合は、1年以上経過しても責任を追及することが可能です。また、基本構造に関する不適合の場合は、10年間の保証期間内であれば問答無用で適用されます。
出典:e-Gov「民法」
まとめ
新築住宅の基本構造に瑕疵が見付かった場合、10年以内であれば、法で定められた保証の対象となります。例え依頼先の工務店が倒産していても必ず保証は受けられるため、小まめに家の状態をチェックしておくとよいでしょう。
また、基本構造以外にも設計書との相違や明らかな欠陥があると確認できた場合、契約不適合責任を追求できるケースがほとんどです。契約不適合責任は瑕疵の発見から1年以内に通知する必要があるため、問題を見付けた際は早めに動くことをおすすめします。