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二世帯住宅は間取りの検討が重要!よくある失敗からポイントまで解説

二世帯住宅は間取りの検討が重要!よくある失敗からポイントまで解説

二世帯住宅を建てる際には、家族全員が快適に暮らせるように間取りについて十分検討する必要があります。いざ住みはじめてから不具合に気付いたという場合、改修工事に多額の費用がかかることは少なくありません。

当記事は、二世帯住宅の間取りの種類やよくある失敗例、間取りを決める際の重要ポイントについて解説します。住宅購入に活用できる補助金も複数紹介するため、二世帯住宅を建てたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。

1.二世帯住宅とは?

二世帯住宅とは、主に親世帯と子世帯が一緒に住むことを前提に建てられた住宅を指します。孫を入れると3世代が一つ屋根の下で暮らすため、間取りや設計に関して考慮すべき項目が多数あります。家自体も単世帯と比べて、大きくなる傾向です。

二世帯住宅は「子育て」や「親の介護」といった観点から見てメリットが多く、少子高齢化が進む昨今においてマイホーム購入の有力な選択肢となっています。

1-1.二世帯住宅の間取りの種類3つ

二世帯住宅の間取りは玄関をはじめ、設備をどこまで共有するかによって3つの種類に分かれます。自分たちのライフスタイルにあった間取りプランを見つけるために、それぞれの特徴やメリット・デメリットを把握しておきましょう。

ここでは、二世帯住宅の間取りの種類について、どのような違いがあるのか解説します。

完全同居型

玄関やリビング、水回り(バスルーム・トイレ・キッチン)など、生活に必要な設備を二世帯で共有する間取りです。寝室はそれぞれに分かれており、同居人数によって部屋数が異なります。

・メリット

世帯間のコミュニケーションが取りやすく、家事や子育ての分担がスムーズに行えるのがメリットです。お互いの生活の様子が見えるため、一緒に住んでいる実感も得やすいでしょう。共有部分が多く、建築費用が抑えられるのも魅力です。電気やガスの契約が1世帯分で済み、生活費の節約にもつながります。

・デメリット

足音や話し声など、生活音について気を遣わなくてはならない点がデメリットです。生活時間についての決まりを設けておかないと、入浴のタイミングがかち合うなどして、ストレスを感じることがあります。その他、価値観の相違により希望した家が建てられない場合があります。

部分共用型

玄関や水回りなど、一部の設備と空間を共有する間取りです。どこまで共有するかに明確な決まりはなく、間取りのバリエーションが非常に豊富です。近年は中庭や屋上を交流の場として共有する新しい発想も生まれています。

・メリット

プライバシーを確保しながらも生活を支え合える、程よい距離感が魅力です。親世帯と子世帯で生活リズムが異なることは珍しくないものの、部分共有型の間取りなら工夫次第で自分たちの生活リズムを維持できます。共有部分もいくつかあり、スペースの活用としても無駄がありません。

・デメリット

生活空間を完全に二分化するわけではないため、日常的な配慮が必要です。設計に自由度がある分、間取りをよく話し合わないとイメージ通りの暮らしにならない可能性もあります。完全同居型にも言えるものの、各世帯でどのくらいの光熱費がかかっているか把握しにくいこともデメリットの一つです。

完全分離型

すべての空間と設備を分離する間取りです。メゾネットタイプのように「住宅を左右で分ける方法」と、アパートやマンションのように「上下階で分ける方法」の2種類があります。

・メリット

各世帯のプライバシーを十分に確保できるのが最大のメリットです。必要に応じて助け合うこともでき、二世帯住宅ならではの安心感もあります。光熱費を各世帯で分けられるため、家計管理も便利です。

・デメリット

生活に必要な設備を世帯ごとに持つため、他の間取りに比べて建築費用が高くなる傾向です。土地も相応の広さが必要となります。世帯同士のコミュニケーションが取りにくいのも難点です。共有部分がないために、対面する機会を意識的に設けないと交流が図れません。

2.【項目別】二世帯住宅の間取りでよくある失敗とは?

マイホームは人生の中で大きな買い物であり、多くの人が慎重に判断をしながら購入します。しかし、二世帯住宅は特性ゆえに建てたことを後悔する人が少なからずいます。安心して購入するためには、どのような理由で失敗するのか知っておくのが重要です。

ここでは、二世帯住宅の間取りでよくある失敗例を3つ紹介します。

2-1.来客

多少なりとも来客を想定した間取りにしておかないと、思いのほかストレスになることがあります。たとえば、子世帯側の友人関係や会社関係の人を招待する際に、同居の親世帯に気を遣ってしまうケースです。離れたところに住む夫側や妻側の親が来訪する際も、同様の悩みが起こりえます。来訪する頻度や親同士の関係性にもよるものの、気兼ねしてしまうという人は少なくありません。

ゲストルームやフリーで使用できる部屋があるのが理想ですが、ない場合は来客対応に苦労する可能性があります。完全同居型やリビングなどを共有する部分共有型でよくある失敗となるため、これらの間取りを検討している人は注意が必要です。

2-2.費用

二世帯住宅は費用面において、世帯間のトラブルが起きやすい傾向があります。建築費用を折半する約束で二世帯住宅を計画したものの、途中で一方的に世帯に反故されるケースもその一つです。トラブルが解決したとしても、その後の親子関係がギクシャクしてしまうこともあるでしょう。

世帯間における生活費用の負担割合について、不満を抱える人もいます。子が共働き世帯の場合、日中に家にいる親世帯とでは電気や水道の使用量に差が生じます。単純に料金を半分ずつ出している場合は不公平となり、モヤモヤとした気持ちで暮らすことになりかねません。相手が義理の親の場合は、余計に言い出しにくいでしょう。

2-3.ライフスタイル

世代が違えば、ライフスタイルや趣味趣向が異なるのは当然です。親世帯と玄関を共有する子世帯では、「帰宅時間を毎日チェックされているように感じる」という人が少なくありません。キッチンを共有するにあたっては「料理を任されているものの、メニューや味付けを指示されて自由に作れない」といった不満の声が聞かれます。

採光を考慮して設けた吹き抜けが、騒音トラブルに発展する恐れがあることも認識しておきましょう。1階のテレビの音が2階まで響き、生活に支障をきたす場合があります。在宅ワークをする人や、勉強に集中したい人にとっては、予想外の障壁となるでしょう。

3.【重要】二世帯住宅の間取りを決める際のポイント7選

二世帯住宅を建てる際には、さまざまな失敗を避けるために下記のポイントを意識しましょう。

  • バリアフリー
  • 玄関の配置
  • プライバシー
  • 防犯対策
  • 家事分担
  • 経済的分担
  • 出口戦略

ここからは、各ポイントの具体的な内容や、どのような点に注意すべきかについて解説します。

3-1.バリアフリー

二世帯住宅は将来を見据えて間取りや設備を決めることが重要であり、親世帯側のバリアフリー化は特に意識したい点です。家の設計を進める上では部屋間の段差を減らすだけでなく、廊下の幅にも余裕を持たせましょう。車いすが必要になった場合にも、移動がスムーズです。

トイレやバスルームに介護用スペースを設ければ、介護者の負担も減らせます。親がまだ元気で心配ないという場合でも、怪我や事故がきっかけで介護が必要となる可能性がないとも限りません。いざというときに慌てずに対応できるよう、新築時にできる限りの対策をしておきましょう。

3-2.玄関の配置

二世帯でそれぞれ独立した玄関を設ける場合は、配置に考慮する必要があります。角地を除けば、建物が道路に面する部分は一面がほとんどです。したがって、親世帯・子世帯がそれぞれ道路側に玄関を設けようとすると、よほど大きな土地でない限り玄関同士が接近してしまいます。出入りする頻度や時間帯が異なる場合でも、嫌だと感じる人がいることは認識しておきましょう。

一方でこのような事象を避けるために玄関を遠ざけた場合、共有の廊下でつなぐことが難しくなります。建物の形状によって最善の解決策は異なるため、専門家と相談しながら配置を決めることが大切です。

3-3.プライバシー

二世帯住宅は、それぞれの家族のプライバシーをどのように確保するかが課題です。お互いに干渉しすぎないことは当然ながら、物理的な距離を設ける必要もあります。完全共有型・部分共有型については、寝室の位置を離したほうが気を遣わずに暮らせます。広さを問わず自由に使える個室や書斎など、個々が一人になれる空間もあるとよいでしょう。

住まいを上下階で分ける場合、寝室の上付近に水回りがあると就寝時に排水音が気になることがあります。トイレやキッチンなどは、上下階で同じ場所に設けると無難です。わずかな生活音でも毎日続けば、大きなストレスとなります。プライバシーを重視する人や、極端に神経質な人は完全分離型の間取りを検討しましょう。

3-4.防犯対策

二世帯住宅は家全体が完全に留守になる時間が少なく、単世帯と比べて防犯面で優れているとされます。しかし、どちらかの世帯で防犯意識が低いと空き巣などの侵入を許してしまい、もう片方の世帯にまで被害が及ぶ恐れがあります。二世帯住宅の特性を理解した上で、それぞれが十分な防犯対策を行うことが重要です。

警備会社のセキュリティサービスを利用する、センサー付きの照明を敷地入口や外構に設置するなどに加えて、各世帯を行き来するドアにも防犯対策をしておくと安心です。タイマー付きの照明を設置すれば、夜間でも家族が起きているように見えるため、不正侵入に対する抑止力が期待できます。

3-5.家事分担

完全同居型や部分共用型の間取りでは、両世帯が家事を分担して行う場面があります。スムーズかつそれぞれがストレスを抱えないためには、洗濯や掃除などについて「誰が」「どの範囲まで」行うのかを明確にしておくことがポイントです。

留守時の対応も課題です。子世帯の親の帰宅が遅いときは孫の世話は誰が行うのか、留守世帯の宅配便は受け取るべきかなどを話し合っておくとトラブルを回避できます。その他、家事を行いやすいように動線を意識したレイアウトにするのも大切です。ダイニングキッチンは特に使用頻度が高いため、家族の意見を聞きながら慎重に決めましょう。

3-6.経済的分担

親子関係であっても、お金の問題はシビアです。経済的な負担が親世帯・子世帯のいずれかに大きく偏っていると、気分よく暮らしていくのは難しいでしょう。建築費や住宅ローンについて、お互いが無理なく支払える金額を入居前に決めておくことが不可欠です。

完全分離型を除き、二世帯住宅はそれぞれの光熱費を把握しにくいという悩みがあります。住宅によってはメーターや配管を別々にできる場合もあるため、必要に応じて検討してみましょう。なお、親が定年退職したときなど、世帯年収に変化があった際には、都度負担割合を見直すことも必要です。

3-7.出口戦略

二世帯住宅の間取りを決める上で、忘れてはならないのが出口戦略です。転勤などによる子世帯の転居や、親世帯が亡くなったときなど、その後住宅をどのように使用していくのか現実的に考えておく必要があります。空いたほうの住宅を賃貸物件として提供するのはよくある方法です。家賃収入が入れば、住宅ローンの足しにもなります。

当然ながら、賃貸物件として利用する場合は共有部分を分離する工事が必要です。家を建てる段階である程度の想定をしておけば、先々大幅な費用をかけずに貸し出せます。完全分離型の間取りならば、さらに手間がかかりません。

4.二世帯住宅を建てる際に活用できる補助金の種類3つ

二世帯住宅を建てるにあたって、やはり気になるのが費用面でしょう。金銭的な負担や住宅ローンを払い続ける不安を少しでも軽くするためには、公共の補助金を活用することがおすすめです。

最後は、二世帯住宅の購入前に知っておくべき補助金の制度を3つ紹介します。

4-1.地域型住宅グリーン化事業

地域型住宅グリーン化事業とは、地域における木造住宅の生産強化や環境負荷の低減を目的とした公共事業です。省エネルギー性能や耐久性に優れた木造住宅を新築する際に利用することが可能です。補助額の上限は、住宅性能によりそれぞれ異なります。

  • 長期優良住宅:110万円
  • 認定低炭素住宅・性能向上計画認定住宅:70万円
  • ゼロエネルギー住宅:140万円
  • 省エネ基準(既存)を満たす住宅:50万円

出典:国土交通省「令和3年度地域型住宅グリーン化事業グループ募集の開始~地域の中小工務店等が連携して取り組む良質な木造住宅等の整備を支援します~」

地域型住宅グリーン化事業の補助を受けるためには、国土交通省が採択したグループへ発注することが前提です。グループは、地域の中小工務店などを中心に構成されていることが特徴です。住宅については「地域型住宅の規格や仕様に準拠している」「主要木材を地域材に使用している(ゼロエネルギー住宅を除き)」などの要件を満たす必要があります。

4-2.こどもみらい住宅支援事業

こどもみらい住宅支援事業は、子育て世代や若者夫婦の住宅購入にかかわる負担軽減や2050年カーボンニュートラルの実現を目的としています。下記の世帯を対象に一定以上の省エネ性能を有する注文住宅を建てる際、また新築の分譲住宅を購入する際に利用できます。

  • 子育て世帯:申請時点において2003年4月2日以降に出生した子を有する世帯
  • 若者夫婦世帯:申請時点で夫婦であり、いずれかが1981年4月2日以降に生まれた世帯

補助額は下記の通りです。

  • ゼロエネルギー住宅:100万円
  • 高い省エネ性能等を有する住宅:80万円
  • 一定の省エネ性能を有する住宅:60万円

こどもみらい住宅事業者として登録されている住宅事業者・販売事業者を選ぶことで、補助が受けられます。「土砂災害防止法に基づく土砂災害特別警戒区域外に立地する」「住戸の床面積が50m2以上ある」などの要件もあるため、活用の際には詳細を確かめましょう。

出典:国土交通省「こどもみらい住宅支援事業」

4-3.長期優良住宅化リフォーム推進事業

長期優良住宅化リフォーム推進事業は、既存住宅の改修工事費用の一部を国が負担してくれる制度です。住宅の性能向上を目的としたリフォーム工事や、子育て向け住宅への改修工事を行う際に利用することが可能です。性能向上とは耐震性向上や劣化対策などを指すものの、バリアフリー化など高齢期に備えた改修工事も補助対象となります。

長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助率は、対象費用の1/3です。補助額上限については標準型住宅の場合で100万円/戸、長期優良住宅(増改築)認定の場合で200万円/戸です。「リフォーム後に一定の性能基準を満たすこと」「建築士などの専門家によるインスペクションを受けること」が補助を受けるための主な要件となります。

インスペクションとは、家の傾きや雨漏りなど、住宅の劣化具合を把握するための調査です。補助は同事業において事業者登録をしている住宅業者に発注すると受けられます。

出典:国土交通省「令和4年度「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の募集を開始します!~既存住宅の性能向上、子育てしやすい環境等の整備に向けて~」

まとめ

二世帯住宅とは親世帯・子世帯が一緒に住むことを前提に建てられた住宅です。間取りは完全共有型・部分共有型・完全分離型の3つに分かれます。建ててから後悔しないためには、玄関の配置やプライバシーなどを考慮して間取りを決めることが大切です。

また、住宅業者選びに迷った際には、地域に根差す工務店に相談することをおすすめします。