日本は地震大国であるため、マイホームを持ったら地震保険に加入するべきか迷う方が多いのではないでしょうか。
地震保険に加入していると、地震などで被災したときに保険金を生活再建に役立てることができますが、毎年の保険料も気になるところです。
この記事では、地震保険の必要性や、地震保険料の相場、計算方法を紹介します。併せて地震保険の補償内容も解説するので、地震保険への加入を検討している方はぜひ参考にしてください。
1.地震保険は必要?
地震保険とは、地震や噴火、津波によって引き起こされた火災・損壊・埋没・流出による損害を補償するための保険です。地震によって起きた火災は、火災保険では補償されないため、地震保険でカバーする必要があります。
地震保険は単独で加入できないため、火災保険とセットで加入することになります。火災保険を契約している人なら、契約期間中であればいつでも地震保険に加入することが可能です。
地震災害は被害規模が甚大になりやすいため、地震保険は日本政府と民間の損害保険会社が、共同で運営している公共性の高い保険です。地震保険に加入すると、保険金を被災後の生活費に充てたり、住宅ローンの返済に充てたりできます。
2020年度の地震保険を火災保険と併せて入っている人の割合(付帯率)は68.3%
、全世帯に対して地震保険に加入している世帯の割合(世帯加入率)は33.9%
です。
2.地震保険料の相場|保険料の決まり方も
地震保険は政府と民間保険会社が共同で運営しているため、どこで契約しても保険料や補償内容に差はありません。
保険料は、対象の建物の構造区分や、建物の所在地の都道府県ごとに異なります。また、地震保険は建物の耐震性能や建築年、保険期間の長さによって割引があるため、人によって保険料が変わりやすい保険と言えます。
地震保険料の算出方法は下記の通りです。
保険料=保険金額×基準料率
基準料率={基本料率×(1-割引率)×長期係数}×1/1,000
計算式が複雑なため、 保険料をシミュレーションできる下記のようなサイトを活用するのがおすすめです。
たとえば、下記の場合の地震保険料を、シミュレーションしてみましょう。
- ・建物の所在地が東京都、構造区分がロ構造(基本料率4.22)
- ・火災保険の契約金額が建物1,000万円、家財100万円
- ・免震建築物割引を適用(50%割引)
- ・1年契約(長期係数なし=1)
契約金額が300万円の場合の計算式は下記の通りです。
3,000,000円×{4.22×(1-0.5)×1}×1/1,000=6,330円
前述した日本損害保険協会のサイトを使い保険料シミュレーションをすると、下記のような結果になります。
【地震保険料例】
契約金額 年間保険料 建物 300万円~500万円 6,330円~10,550円 家財 30万円~50万円 630円~1,060円
また、地震保険は2019年1月に改定され、 基本料金が全国平均で約3.8%の値上げとなりました。地域によっては値下げされたところもあり、予測される地震リスクによって、これからも料金が変動する予定になっています。
出典:住宅金融普及協会「地震保険3 2019年1月 地震保険料率が再度の改定」
その他の変更点は長期係数の縮小による割引率の減少や、割引を受けるために提出する書類の追加などです。
これから、基本料金や割引率、長期係数などの地震保険料の理解に役立つ各項目を詳しく紹介します。
2-1.基本料金
地震保険の基本料金は建物の所在地と構造区分で決まります。建物の構造区分で、イ構造は主として鉄骨・コンクリート造の建物、ロ構造は主として木造の建物です。下記の表は、建物の所在地ごとの保険金額1,000万円で計算した場合の料金です。
【保険金額1,000万円あたりの基本料金】
建物の所在地 イ構造 ロ構造 北海道・青森県・岩手県・
秋田県・山形県・栃木県・
群馬県・新潟県・富山県・
石川県・福井県・長野県・
岐阜県・滋賀県・京都府・
兵庫県・奈良県・鳥取県・
島根県・岡山県・広島県・
山口県・福岡県・佐賀県・
長崎県・熊本県・鹿児島県7,400円 12,300円 福島県 9,700円 19,500円 宮城県・山梨県・愛知県・
三重県・大阪府・和歌山県・
香川県・愛媛県・大分県・
宮崎県・沖縄県11,800円 21,200円 茨城県 17,700円 36,600円 埼玉県 20,400円 36,600円 徳島県・高知県 17,700円 41,800円 千葉県・東京都・
神奈川県・静岡県27,500円 42,200円
2-2.割引率
地震保険料は建物の耐震性能や建築年によって割引されます。割引には下記の4種類がありますが、複数条件に該当していても併用されることはなく、もっとも割引率が高い割引のみ適用される仕組みです。
【地震保険の各種割引】
免震建築物割引 適用条件 住宅品質確保促進法にもとづく免震建築物である場合 割引率 50% 確認書類 住宅性能評価書など
耐震等級割引 適用条件 住宅品質確保促進法にもとづく耐震等級3を有している場合など 割引率 50% 確認書類 住宅性能評価書、耐震性能評価書など
耐震等級割引 適用条件 住宅品質確保促進法にもとづく耐震等級2を有している場合など 割引率 30% 確認書類 住宅性能評価書、耐震性能評価書など
耐震等級割引 適用条件 住宅品質確保促進法にもとづく耐震等級1を有している場合など 割引率 10% 確認書類 住宅性能評価書、耐震性能評価書など
耐震診断割引 適用条件 耐震診断または耐震改修の結果、改正建築基準法での耐震基準を満たす場合 割引率 10% 確認書類 耐震診断または耐震改修の結果により減税措置の適用を受けるための証明書など
建築年割引 適用条件 1981年6月1日以降に建築された建物である場合 割引率 10% 確認書類 建物登記簿、重要事項説明書など
2-3.長期係数
地震保険料は、2年~5年の保険料を一括払いすることにより割引を受けられます。長期係数とは、地震保険料の計算時に使う値で、下記のように契約年数が長くなるほど保険料が安くなります。2021年1月から実施されている地震保険の長期係数は下記の通りです。
【地震保険の長期係数】
保険期間 長期係数 2年 1.90 3年 2.85 4年 3.75 5年 4.65
たとえば、保険期間を5年間にすると、保険料の計算は「1年分の保険料×5」ではなく「1年分の保険料×4.65」です。保険料を節約したい方は、長期の契約を検討してみましょう。
2-4.地震保険料控除
地震保険料は地震保険料控除制度の対象になるため、支払った保険料が下記の表の分だけ控除され、所得税と住民税が軽減されます。
【地震保険料控除の控除額】
年間支払保険料 所得税 住民税 50,000円以下 保険料全額 保険料の2分の1 50,000円超 一律50,000円 一律25,000円
また、2年~5年の長期で契約している場合は、地震保険料の総額を保険期間で割って1年分の保険料を算出し、控除することが可能です。
3.地震保険の補償内容
地震保険の補償金額は、火災保険料の30〜50%
の範囲内で、建物は5,000万円
まで、家財は1,000万円
までの上限が定められています。
地震保険の補償対象は居住用に供する建物および家財と定められているため、事務所などの事業に使う建物や什器などの備品は対象外です。また自動車や、1つの価額が30万円を超える貴金属や骨董品など、家財に含まれないと判断され補償対象外になるものもあるため注意が必要です。
地震保険は下記のように地震によって受けた損害の程度によって、定額の保険金が支払われます。
補償金額 全損 地震保険金額の全額 大半損 地震保険金額の60% 小半損 地震保険金額の30% 一部損 地震保険金額の5%
一部損未満の被害だった場合は、保険金を受け取ることはできません。
このように、 地震保険は住宅建て直しのための費用全額を補償する保険ではない点に注意が必要です。地震保険は被災者の生活を安定させるための保険なので、より多くの補償を受けたい方は、保険会社が独自に用意している上乗せ補償特約を検討してみましょう。
まとめ
地震などの災害によって起きた火災は火災保険では補償されないため、地震保険でカバーする必要があります。地震保険は地震によって受けた損害をすべて補償してくれるものではありませんが、被災後の生活資金や住宅再建に充当することができ、生活の安定に役立ちます。
地震保険の保険料は地域や建物の構造により基本料金が異なる上に、各種割引が設定されており計算が複雑です。日本損害保険協会などの、保険料をシミュレーションできるサイトを活用して、金額の目安を計算してみましょう。